愛されたい僕らは
1
「アッ、ああっ!アンッ…も、もっとぉ」
ああ…彼の仕事場から聞こえてくる声に気づいたのはこれで何回目なのだろう。
今日はいつもより時間が余った為に、彼に何か温かな料理でもと仕事場に向かったものの、その部屋には既に先客が居た
部屋からは柔らかなソプラノが絶えず聞こえてくる。
また同じ人だ…
彼の明らかな裏切り行為に目の前が真っ暗になり、絶望するが、ただ黙ったまま目を逸らす。僕は何も言えない…いや、言える“立場”にないからだ。
暗がりの中、部屋から艶めかしい声は絶えず響く。
僕なんかが悲しいなんてこと言っちゃいけない…今でも尚続く行為に僕はそっと静かに部屋を出た。
自らの気持ちを持て余すように、鉛のようにどんよりとした気分のまま帰宅の途に着いてしまった。
「はあ…この材料どうしようかな」
「お帰り、潤」
「っ!!雅…ただいま」
ひとりになりたいと急いで帰宅した自宅の部屋に居る恋人に少々驚きながらも何事もなかったかのように接する。不審に思われたら嫌だから
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