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医呪師の娘
1

――この国の呼吸には人の血に似た赤が混じる。



Verfaulte Frucht war im Inhalt von der Kiste.
(箱の中身は腐った果実)




 荒れ果てた街、その至る所を、蝿がその耳障りな羽音を撒き散らしながら、煩く飛び回っていた。

蝿が狂喜して群がるのは、街のど真ん中で腐臭を放つ、――死体。

襤褸切れが張り付いた皮膚は、無数の痘痕に爛れ、悲痛な顔をした骸が無残な姿で放置されていた。

子供も大人も関係ない。病は感染したもの平等に残酷な死を運ぶ。

死に絶えた者の隣には、少なからず、生きた者もいた。

痩せた膝を抱き、扱けた頬をした人々が、虚ろな瞳で、唯、魂が抜け落ちたかのように、ひっそりとうずくまっていた。

ある者は耐え難い掻痒感に苛まれ、爪が肉を裂き全身血だらけだった。

ある者は熱に浮かされ、自分の吐瀉物に塗れ、排泄物に埋もれていた。

ある者は襲う壮絶な痛みに狂い、声なき声で誰かに助けを求めていた。

それは、突如として流行りだした原因不明の流行り病。人々に死を齎す伝染病。見渡す限りの生き地獄。

歯止めのかからぬ貧困と、先の見えない不安感は、この国、ヴィントシュトースの民草を容赦なく蝕み続けていた。



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