痛みと嘆きの塔
2
赦されざる想いと
約束されざる願い
歪んだ世界に
映し出されたそれは
一体誰の
記憶だったのだろう
『Thus,It is fragile.』
人の思いと記憶の欠片を集めて紡ぎ行く運命の舞台は遥か彼方、或いは異なる地平線の向こう。
青い空は果てしなく続き碧い山は霞む様に遠く。
その麓には、深く暗く生い茂る草木、それは人を拒む古き獣の森。
これは、そんな閉ざされた大地で暮らす兄弟達の物語。
「兄ちゃん!」
青く澄み渡る空、白く流れ行く雲。
青年が呼び声に振り返ればそこには、捕まえた魚を嬉しそうに掲げる少年の姿があった。
少年は、水に濡れた体を震わせ此方へと駆け寄って来る。
「良く捕まえたな」
青年が陽光を浴びてキラキラと光る金色の髪をそっと撫でると、彼を見上げる少年はヘヘッと照れ臭そうに笑った。
二人を結ぶ強い絆。
――彼らは、この世で唯二人だけの兄弟。
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