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注文の多いにゃんこ


玄関の隅に昔から置いてある七輪を見てふと考えた。

『七輪でサンマを焼いたら、グリルで焼くより美味しいのだろうか?』

やっぱり炭で焼くとなんでもおいしくなる気がする。炭火焼きって聞くだけでなんだか美味しそうだもの。
でもグリルもなかなか美味しいよね。炭火焼きもやっぱりグリルにはかなわないのかな?でも炭火焼きって聞くだけで本当に美味しそうだし…

ちょうどお腹が空いてきたので暇人な私はさっそく庭でサンマを焼くことにした。
このままだとなんだかスッキリしない。
はっきりと炭火焼き対グリルで決着をつけようじゃないか。










「おいしそー…」

もう焼けたかな?と菜箸でつつきながら香ばしい匂いを漂わせている二匹のサンマを眺めていると、足元に見知らぬにゃんこが「にゃーお、にゃーお」と鳴きながらすり寄ってきた。

どこのにゃんこだろう?
ずいぶんと頭の大きいにゃんこだなぁ。

「…サンマ食べたいの?」

私が尋ねると、再び「にゃーお、にゃーお」と鳴き始める。
よしわかった、食べたいのね。

私はお皿をもう一枚取ってきて、そのお皿に焼きたてのサンマを一匹のせ、縁側に置いた。

「はい、どうぞ」

にゃんこは縁側に飛び乗り、「熱いからね」という私の忠告も無視してサンマに食らいつく。
「あちっ!」と言って飛び上がるにゃんこ。
よくみると若干涙目になっていた。



……………って、あれ?



「…今、『あちっ』って言ったよね?」

首を横に激しくぶんぶんと降るにゃんこ。

「普通のにゃんこは否定するときに首を振ったりしないよ」

私がそう言うと、にゃんこはピタリと首を振るのを止めた。

「に、にゃーお」

「…改めて聞くと嘘くさい鳴き声だね」


それからしばらく私とにゃんこは無言で見つめ合った。無言の戦いだ。
なんとなくだけど、目をそらしたら負けな気がした。







見つめ合うこと数分後、無言の戦いに敗れたのはにゃんこだった。

「…負けたよ」

にゃんこはそうはっきり喋ると、「醤油かけてくれ」と注文をつけてきた。

「にゃんこが喋った…」

「いいから、さっさと醤油かけろ」

「にゃんこに醤油は毒なんだよ」

「私はにゃんこではない」

「じゃあ、たぬき?それともブ「たぬきでもブタでもない!」

たぬきでもブタでもない?

もしかして…

「喋るだいふ「大福でもない!」

大福でもない?
じゃあこの目の前に居る丸っこい生き物はなんなんだろう…?



…まぁ、いいや。
とりあえず(本人は否定してるけど)にゃんこだと考えよう。






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