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死ぬほど恋焦がれています


卒業式も無事に終わり、卒業生も私以外はほとんど帰ってしまった。
本当にあっという間の三年間。あっという間だったけど、私にとってとても大切な三年間だったと思う。

最後に見納めとして教室に向かった。
がらんとした教室を見ていると、楽しかった日々が鮮明に脳裏に蘇ってくる。あんなことやこんなこと。すべてが私の宝物。

教室を眺めていたら何故か涙が溢れてきた。特別悲しくも嬉しくもないのに涙が溢れてとまらない。今の私を支配するのは切ないような寂しいような。そんな感情。

「よォ、まだいたのか」

振り向くとスーツに身を包んだ銀八先生が立っていた。スーツ姿の先生は入学式以来だ。

「なんで泣いてるの」

「…よくわからない」

「よしよし。卒業おめでとう」

私の頭を優しくなでてくれる先生。

やめてよ。今日かぎりで先生への想いは忘れてしまおうと思ってたのに。そんな優しくされたらもっと好きになっちゃうよ。もっと切なくなっちゃうよ。


「…ありがとうございました。さようなら先生」

私はそう言ってから一礼し、その場から走り去るように生徒玄関に向かった。

(さようなら先生。そして私の三年間の恋と大好きなこの学校。)




しかし、なぜか玄関で帰ることをためらってしまう。
心に何かがつっかかって身動きがとれない。「このままじゃ一生後悔するよ」と私の中のもう一人の私が叫んでる。

どうすればいいのか、本当はわかってるよ。どうすれば後悔しないで済むのかちゃんとわかってる。だけど臆病者の私はそこから逃げているだけなんだ。

「ぎんぱちせんせー…」

そっとつぶやいてみた大好きな人の名前。それだけで胸がいっぱいになる。

生徒と先生。

わかってる。結ばれるなんてそんな夢みたいな話あるわけがない。わかってる。わかってるけど、だけど、やっぱり後悔はしたくない。気持ちだけでも伝えたい。


私は三年間の先生との思い出を思い出しながら教員玄関に向かった。思い出しながら改めて自分の気持ちが本物であることを確かめる。
うん。この気持ちは半端な気持ちなんかじゃない。私は本当に先生が好きなんだ。

幸い教員玄関には誰もいなかった。私は銀八先生の下駄箱を見つけると、三年間の想いを込めてラブレターの代わりに学校の花壇で摘んだ紅色の薔薇と“ヒント、紅薔薇の花言葉”とだけ書いたメモを入れた。
誰が入れたかなんてわからなくていい。誰が書いたかなんてわからなくてもいいからあなたに伝えたかった。


死ぬほど
恋焦がれています


それは今も、これからも


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