‥たとえ困難な恋であっても‥ 放課後、日誌を書いているとふとあるクラスメイトから声をかけられた。 「香燐、ノート貸してくれ。」 「ハァ?なんでウチが?っなもん自分でとっとけよ!」 とか言いつつもしっかりノートを手渡す。 やべぇ、サスケの指紋がウチのノートに…! 「明日返す。」 「絶対だからな!」 ノートを受け取るとき手が触れやしないかドキドキしたが、結局何も怒らずサスケはカバンにしまった。 そしてそのまま教室から出ていってしまった。 ったく、もっと話してくれりゃいいのに…… ま、これでも他の奴らに比べたらマシなほうか。 アイツが転入してきて最初に隣になったのがウチ。 人と群れるのを好まないサスケでも、来て間もない学校じゃウチに頼らざるをえない。 そんな面倒な役、普段なら御免なのだがコイツの場合は話は別。 イイ男なら喜んで引き受けてやる。 多くを語らない口。 替わりに鋭い眼差しで己の自信と誇りを語る。 いつもクールで笑ったところは見たことないが、きっと核爆弾級のカッコヨさだろう。 しかもあの木ノ葉学園から来た天才とか、クソっ…堪んねぇ…! クラスの女子も同じことを思ったのか、サスケサスケと大盛り上がり。 だけどサスケの態度は相変わらずで、相手にされない彼女たちの熱ももう冷め初めている。 こうなったらウチのサスケの真剣勝負。 ぜってーサスケを落としてやる……! 数分後、サスケが戻ってきた。 忘れ物したらしく、机の中をガサゴソ漁っている。 にもかかわらず心なしか表情が柔らかい。 いつもつり上がった目尻がなんだか微妙に垂れている。 鼻唄まで聞こえてきそうだ。 「おい、何かいいことでもあったのか?」 「お前には関係ない。」 ぶっきらぼうに言うサスケ。 だが顔を朱らめたのをウチは見逃さなかった。 もしかして、女か…? いや、まさか。 確かにモテるタイプだろうけど女と付き合うようなタイプではない。 第一クラスでしゃべる女もウチくらいだ。 …まぁ、いいや。 ちょうどウチも日誌を書き終えたところだし、偶然のふりして一緒に帰っちゃお! 忘れ物を見つけて無言で教室を出るサスケを目で追う。 職員室に行かなきゃいけないけど、走ればそのうち追い付くだろう。 待ってろよ、サスケ! すぐに会いに行くから。 ──── 先生につかまり、予想外に時間が経ってしまった。 くそっ、タイミング悪いんだよマダラのやつ…… もしかしたらもうサスケは駅に着いているかもしれない。 だとしたら今日は諦めるしかないな。 せっかく二人で帰れるチャンスだったのに。 今更走る気にもなれず、だらだらと靴に履き替えた。 昇降口出ると傾いた夕日が街をオレンジに照らしていた。 前に伸びる一人分の影が少し寂しい。 あとちょっと早ければサスケとこの景色を見れたと思うと何とも言えない気持ちになる。 こんなとき、少しでもウチに好意があるヤツなら校門で待っていてくれるのかもしれない。 だけどサスケに限ってそんなことはないだろう。 いくら頼ってくれてるからって所詮ウチの片想い。 もし待っていてくれてたら奇跡だとしか言いようが……ん? 校門に人影が一つ。 腕を組んで門に寄りかかる後ろだけのツンツン頭。 間違いない、サスケだ! 一気に喜びが溢れだし校門へ向かって走り出した。 サスケがウチのために待っててくれていた! ついに奇跡が───。 「サス「サスケくーん!!」 重なった聞き覚えのないアルトに足が止まる。 束の間の奇跡。 サスケはこっちなんか見向きもせず、柔らかい声のするほうへ近寄った。 「遅い。心配かけさせるな。」 「ごめんごめん、迷子になっちゃって。」 サスケの背中に隠れてソイツ見えなくても、どんな関係かくらいウチにも想像ができる。 柔らかいアルトだけでなく、独特のテノールもいつもよりずっと柔らかい。 「へぇ〜ここが新しい学校か。ずいぶん綺麗ね!」 サスケの影からひょっこり顔を出したソイツは悔しいほど可愛かった。 肩で揃えられた髪はウチのくすんだ色とは違って淡く優しい桜色。 瞳は鮮やかな翡翠が煌めいて、白い肌は透き通って見える。 そして全身から溢れ出す人懐こいオーラ。 ウチみたいなひねくれ者なんかじゃなくて、素直で純粋な子だというのが話さなくてもすぐにわかった。 「アレが女の子の制服?可愛いなぁ〜!」 女がウチを指差す。 サスケもこちらを向いたが、ウチのことはスルーして女に何やら囁いた。 女の頬は朱く染まった。 「やだサスケくん!恥ずかしいって…」 「事実を述べたまでだ。帰るぞ。」 さりげなくピンクの頭を撫でた手。 ウチはノートに触れただけでも喜んでたのに、あの女は直に触れている。 なのに特別喜んだりはしない。 ごく当たり前の動作なのかもしれない。 そこにウチとあの女の差を感じた。 ウチは所詮、クラスメイト。 あの女が別格なんだ。 2人が並んだとき、初めて女の全貌が明らかになった。 スラリと伸びた脚。 小振りな尻。 胸は控えめだが、それでもウチよりはある。 制服は木ノ葉学園のセーラー服。 清楚な感じが彼女によく似合っていた。 そんな彼女はサスケとお似合いだ。 2人とも、夕日によく映える……。 ───── 「あれ?なに色気づいてんの?髪の毛なんか結んじゃって。」 「イメチェンだよ、イメチェン。」 翌日、珍しく髪を結んで登校した。 以前は腰まであった髪も高い位置でまとめられて、歩く度に左右に揺れる。 それを不思議そうに眺める水月。 「なんかあったの?失恋したとか。」 「違う!宣戦布告だ!」 憤るウチに水月はやっぱり失恋じゃん、と苦笑いした。 確かにサスケには彼女がいた。 ウチとは程遠い、かわいらしい彼女が。 サスケはそいつといるときだけ笑顔になる。 学校じゃ見ることができない、暖かくて優しい顔。 そんなふうにサスケを笑顔にできるあの女に嫉妬した。 髪を切れば好きになってくれるかな、なんて馬鹿なことも考えた。 でも所詮ウチはウチ。 どんなに真似したってあの女にはかなわない。 だったらウチの魅力でサスケを落としてやろうじゃんか。 あの髪の艶、スタイル、可愛らしさに負けない、ウチだけの魅力で。 「それくらいじゃサスケはなびかないと思うよ?」 「うるせー!いちいち口出しすんな!」 「いてっ!」 水月を殴ると同時に、教室のドアが開かれた。 昨日はついていなかった薬指のシルバーにチクリと心が痛む。 でも、ウチだって負けない。 「おい!ノート早く返せ!」 精一杯声を張り上げてサスケの元に駆け寄った。 **** まち様からいただいた素敵なリクエスト、サクラちゃん大好きなサスケに香燐が嫉妬……だったはずなのにうまくリクエストに添えてないです(;;) ホントすみません泣 嫉妬の矛先がサクラちゃんへ向いてしまいました…m(__)m 香燐はサスケとサクラちゃんのラブラブな様子を見て潔く諦めるかどうするか迷いましたが、そこで諦めちゃうと彼女らしくないと思いこのような終わり方にしました。 そしたらサクラ受けサイトの作品とは思えないものに…(;;) あれ、ココ香燐中心サイト…?泣 初めての香燐が楽しすぎて間違った方向へ進んでしまったみたいです(>_<) こんな作品でも愛だけはたっぷりです!! が、苦情返品どんとこーいですので!! このような文しか書けない未熟者ではございますがこれからも精進しますので、よろしければまたお越しくださいませ! この度は素敵なリクエスト、ありがとうございました!! |