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こうして二人は出会ったのでした(捏造米菅)




平日の車内は、天候が良いにも関わらず、客はまばらだった。



ようやく慣れた仕事のたまの休みは家に居たくなかった。
一人、アパートに籠もっているとここ一年の出来事を嫌でも思い出してしまう。

東京に出て彼女に騙されたこと。
自己破産をして田舎に戻ったこと。
両親にひどく叱責されて立場が無かったこと。
見知らぬ男に家業を手伝ってもらったこと。
その代償が自分の体であったこと。

そして、耐え切れずに一人見知らぬ土地に出てきたこと。




菅谷は車窓にうつる自分の顔を見て、ため息を吐いた。
何も言わずに飛び出して来て、あの男はどう思っているだろう?
両親は、また居なくなった自分を見て、今度こそ愛想を尽かしただろうか?

ここまで考えて、いつも思考は止まってしまう。いや、止めるようにしている。
考えたところで最早帰れはしないのだ。
行く当てのない電車が九番目の駅に停車したところでふと、男がボックス席の向かい側に乗り込んで来たことに気付いた。

こんなに空いてるのにわざわざ同じボックス席に座らなくても、と思いつつ、男を横目で確認する。
Tシャツにジーパンのラフな格好の男は自分と同じか少し上だろうか。
モミアゲを切り落としている以外はごく普通の青年に見えた。
脇には大きめのボストンバックを抱えていて、旅行にしては暗い雰囲気だったが、菅谷は特に気に止めず、窓の外を見続けた。



「………あの、」

消えそうに小さな声はスルーすることも出来たが、根は真面目な菅谷はゆっくり顔を正面に向き直した。
モミアゲの無い青年はすいません、と告げると申し訳なさそうに眉をひそめた。


「……はい」
「……あの、本当に申し訳ないのですが…」
「…はい」
「お金、貸して頂けないでしょうか?」
「……………は?」

さすがに言葉を失った。


返事に困っていると、青年は挙動不審な動きで、ひと駅分の電車代を、必ずお返ししますから、と頭を下げてきた。
…やばい人では、なさそうだけど。

「……あ、いいですよ」

気付くと言っていた。
なんでだろう、自分でも良くわからないけどこの人はいい人だということがぼんやり伝わってくるようで、菅谷は五百円玉を青年の手に乗せた。


「ありがとうございます!必ず返しますから」
「お困りのようでしたら別にいいですよ」
「いえ、お返ししますね」

なんだろう、この男は不思議な感覚にさせる。

返事を探している間に、電車は次の駅へと到着し、青年はぺこりと頭を下げて降りて行った。



変な体験をするものだ。
ほどなくして、浅い眠りについたまま、終点の駅に着いた。





駅を降りてみると実家の景色にも少し似た田舎町で、胸騒ぎが起きるのがわかる。

目的もなくふらついていると、田舎町に似つかわしくない男が二人。
特に気にせず通りすぎようとしていたが、5メートル程にまで近づいて、気付いた。



見覚えのある、金龍をあしらったシャツ。
自分を支配していた男の舎弟だ。


咄嗟にその場を走り去った。
男たちは気付いていたようで、後方から追いかけて来る足音が聞こえてくる。

迂濶だった。
まさか、こんなところにまで捜しに来られているとは。


改めてあの男の恐ろしさを感じながら、菅谷は夢中で走った。
田舎道の狭い路地は慣れていたが、二人がかりで追って来られるのはまずい。
とにかく引き離さなければ、と思い路地を突き進んでいると、強い力で体を押されて、その場に倒れこんだ。


「………痛った…」
「静かに」
「…え?」

バタバタと聞こえる二人分の足音。
揉めているような声がしたあと、足音は遠ざかっていった。


顔をあげると見知らぬ人間が自分をかばうように立っていて、不器用にもこの人は自分を守ってくれようとしたことが容易に伝わってきた。
倒れたときに強打した膝をかばいながら立ち上がると、もう大丈夫みたいですね、とこちらに向き直した。




「…あ」
「こんにちは」
「…なんでここに?」
「色々と、訳ありでして」

目の前の男は紛れもなく昼車内で金を貸したあの男だ。
モミアゲのほかに、立っていると無駄に肩幅と胸筋が発達しているのが解って、昼間の印象よりだいぶ変な奴に見える。

「逃げてましたよね?」
「…ええ、まあ訳ありで」
「そうですか」
「…だいぶ膝打ったんですけど」
「あ、これはすいません」
「……家出ですか?」

昼間見たボストンバックの他に荷物がかなり増えている。
男ははにかみながらまあそんな感じ、ですね、と答えた。なにか余裕を作り出そうと無理してる感じが正直鼻につく。


「こっちも聞いていいですか?」
「…はい」
「まさか犯罪者の方…ですか?」
「…………違います」


変な間をあけてしまった。
ギリギリのラインを通って来たがそっちに手を染めるつもりはない。失礼な。

男は良かったと言わんばかりに表情を緩めると、その場にしゃがみこみ、菅谷の砂のついたジーパンに触れた。


「すいません、平気でしたか?」
「まあ大事には至ってません」
「良かった、あなた体弱そうだから」
「……………」


なかなかに慣れ慣れしい。
しかし助けてもらったこともあり、黙って話を聞いていると、おもむろにバッグの中を漁り、菅谷の手を掴み掌に五百円玉を握らせた。



「じゃあまた危険になったら、呼んでください。……犯罪者さん」

男はにこりと笑い、重そうな荷物を背負って歩きだした。






「…別に呼んでないし」

なんともいえない気持ちが胸に広がるなか、菅谷は駅への道をまた歩き始めた。








こうして二人は出会ったのでした

(名前…聞いといた方が良かったかな?)





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ハイパー捏造米倉×菅谷。
米倉さんは結局家を出てきて菅谷さんは茂さんの手から逃げてきた…みたいな妄想です
お互い徐々に傷を舐め合うような関係に発展していく感じ。

…甘い要素も笑える要素もゼロってどういうことだ




あきゅろす。
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