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世界一幸せな狼少年





「……あなた、春日が死んでも誰かにそんなふうにしながら生きてくつもりじゃなかろうね」


珍しく、嫌味をこぼしてみる。

あまのじゃくな若林くんは言葉にできないだけで、本当はものすごく春日のことを好きでいてくれてることなんか、それこそ十五年前から知っているけども。

でもそれじゃまるで、春日じゃなくてもいいみたいでしょ。
願いを叶えてくれるなら誰だっていいみたい。



たまには言って欲しいのよ、
素直じゃないあなたの口から
とびきりかわゆしな愛の言葉を。








「は?なんだそれ」
「なんだじゃないでしょうよ」

予想通り顰めた顔はやっぱり可愛い。
お馬鹿だけど理解力はあるあなたのことだから、意味はわかるでしょう?
言葉のあとに飛んでくるであろうビンタだって、もう右頬が待ち構えてますよ。





「それはねぇな」
「なんで」
「だって、」







「春日は死なない


…だろ?」



そう言う顔があまりに真剣なものだからつい笑ってしまった。
そうしたらやっぱり食らったビンタはいつもより強かった。
笑ってんなよ!とキレ気味の口調とは裏腹に赤くなる頬を見て、やっぱり笑ってしまう。



「そうですな」
「自分で言っといて忘れてんじゃねえよ」
「いやいや忘れてないよ」
「俺が死ぬまで、俺のいうこと聞くんだぜ?」
「いいね、最高だよ」
「は、お前ほんっとバカな」
「それはお互い様じゃない?」



なにが起きても死なないなんて俺の言葉を100パーセント信じてる、他人から見たらひどくばかげてる話だ。

でもね、そんな使い古された安っぽい嘘でさえ、
若林が信じてくれるだけで真実へと変わるのですよ。


若林が望むなら世界制覇だってしますとも。








「本当に、お前にはかなわねえな」
「そのまんま返しますよ」





微笑み合ってから、さっき叩かれた右の頬にキスを一つ。

お返しのようにひどく優しく口付けて、俺たちはまた笑い合った。






世界一幸せな狼少年


(信じてくれるのは)
(君だけでいい)




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大鳥初作品。
春日の喋り方が安定しません



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