レモンの味なんて嘘じゃないか(店わか) 「…店長?」 今日は珍しく店長である彼が非番だった。 ここのところ連勤で疲れていた店長がやっとの休みだ、と昨日の夜布団のなかで呟いていた。 相当お疲れだったのだろう、ぐっすり眠っていたので今朝は起こさないように家を出た。 そして時刻は午後五時。 早番だったわかをが家に戻ると、リビングのソファで横になっている同居人がいた。 「……てーんちょう」 「………………」 「…相当疲れてたんだな」 キッチンには夕飯であろうカレーが作ってあった。 疲れてるのに、作ってくれたんだな。 店長、優しいのです。 穏やかな寝息をたてる店長。 髪はぼさぼさだけど、くっきりした顔のラインもよく見ると長い睫毛も厚めの唇も、改めて見つめていると、いとおしさが込み上げてくる。 店長、かっこいい。 衝動に駆られたように、体が動いてゆく。 覗き込むように顔を近付けて、 吐息を感じるくらいに唇を寄せて。 熱くなる頬とうるさい心臓。 ためらいがちに、店長の唇へ、触れるだけの口付けをした。 勝手にごめんなさい。 だって、かっこいいんだもの。 顔の熱がひかないのを感じながら、さっさとリビングをあとにした。 店長が起きちゃったら、大変だもの! ぱたぱたと軽い足音が消えていくのを確認してから、ゆっくり目を開けた。 先ほどの感触を思い出しながら、唇に触れてみる。 「……嘘だろ」 耳まで真っ赤になった店長が、ひとり残された部屋で呟いた。 レモンの味なんて嘘じゃないか (しっかりあいつの味がした) ―――――――――――― 好きだけどお互い伝えられない店長とわかを。 店長は春日よりへたれだったらいいな お題元:Chien11 ←→ |