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それは皮肉なほどに素晴らしい愛なのだ(春若←山)




「っ、ははははは!」
「…笑い過ぎじゃない?若林くん」
「くくく…いやー山里さんほんと最高っす」





ネタ合わせ、という名の会議が始まってもう二時間はしただろうか。
どうにも毎回テンションがあがるまでに時間はかかるものの、今日も若林の機嫌は最高に良かった。話は尽きない。

某キャラクターを思わせる程甲高い笑い声を響かせて、用意されたノートに出たネタを書き入れていく姿は、やんちゃな少年のようで、自然とこちらの顔も緩む。


「次これ絶対入れましょう!」
「そうだね」
「あとこれと、こっちもいいなー」
「これはまた練ろうよ。各自宿題って感じで」
「そうですね!」

笑い疲れたのか、ふう、と一息つくと傍らにあったミネラルウォーターを飲み干した。



「山里さんと話してると勉強になりますよ」
「そうかな?それはこっちの台詞だよ」
「しずちゃんとネタ作ったりしないんすか?」
「んー最近はなかなか時間とれなくてね」


そっかあ、と宙を見る若林くん。
その質問はお返しした方がいいのかな?
目が合ったその隙に、反応を見るつもりで彼の名前を口にしてみる。



「…春日とは、どうなの?合わせたりしてる?」


ぴくり、と動きが止まる。
皺のよった眉間を見て、この質問を投げ込んだのは正解だったかな、と直感した。





「言うまでもないです、最近は全然稽古してないんすよ」
「…まあ、春日らしいけどね」
「いや、もう笑い事じゃないんですよ、マジで」
「…そうなの?」
「そうですよ、いまだにネタは飛ばすわ噛むわ困ってんすから」
「……………」



唇を尖らせて文句を零す若林くんの姿は色々な意味でドキッとした。
思わず出てしまいそうな一言を飲み込んで、他愛ない相槌を返す。
機嫌を損ねてしまった横顔からはみるみるうちに笑顔が消えていった。
正直、Sを思わせるこの露骨な態度だって嫌いじゃない。いやむしろストライク。






「…若林くん」
「はい?」
「あの、僕とコンビ組んでみる?」




限りなく、ふざけたトーンで言ったつもりだった。
結果は解っているのだ。
気付いたら口にしていた。
いくら心が折れるのは慣れていても、これは辛い。

すぐさま笑い飛ばせるような言い訳を、と思考回路をフル回転。





「…なんてね!いや、また機会があったらさ、やりたいよね」


無理に作った笑顔で、
ゆっくりと頷いた。

「………そう、です、ね」





一瞬困ったようにひきつった顔を、見逃すことは出来なかった。
予想はしていたけど、ここまで完敗とはね。



「やっぱり春日がいいんだよね」
「…………………」


嘘はつけない。
黙りこくって少し悔しそうな顔も、予想出来た。
そしてそれが肯定を意味していることだって、解りきっている。





「…そろそろ帰るよ」
「あ、…お疲れさまでした」










目を合わせないよう、足早に扉を閉めて、一息。
携帯を開いてメールをチェックしようとしていると、聞きなれた声がして顔をあげた。


「おはようございます」
「…春日」
「どうしたんすか」



「…あのさ、」

「…若林くん、貰っていい?」




いきなり、なんですか、と
弱々しい反論。
一瞬凍りついたその仕草、間、表情、全てがまるきり一緒。
これは白旗、あげるしかないよね。



「あんまり真面目にやんないなら俺本当に口説いちゃうよ?」
「ちょ、待ってください」



山里さん!と呼ばれたけどひらひら右手をかざしてエレベーターに向かった。


少しは危機感感じてくれたかな?
全く、見えないものほど強いものはないよね。

なんだか重低音で愛想のない彼女の声が無性に恋しくなって、発信画面を呼び出した。
たまには愚痴を聞いてもらおう。









それは
皮肉なほどに
素晴らしい愛なのだ


(このぐらいの仕返しはさせてくれ)




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山ちゃんの片思いは友情以上恋愛未満なかんじ
漫才でも恋でも結局春日がいちばんな若林を誰よりも理解してればいいです

誰か文才ある方に書き直してほしいぜ!






あきゅろす。
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