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アンフェア・ゲーム(塙土)








別に好きだとか愛してるだとか
言われたい訳じゃないけれど。

ドライな貴方のことだから、
少しぐらい何を考えてるか教えてくれてもいいじゃないですか。












「塙さん」
「なに?」
「あの、今更だとか、いいオッサンが、っていうのはわかってるんですけど、ね」
「…なに」


たまには、言葉にするのもいいじゃないですか、と呟いた。
塙さんの反応をなんとなく見たくなくて、視線を伏せたままでいると、ああ、と寝起きのオッサンのような声がした。




「…急にどうしたの」
「急というか、前々から思ってはいたんですけど」
「……言葉に、ねえ」
「…はい」


予想は出来ていた筈だったが、恋人の冷えきった反応に、どうにも言葉が消えていく。
すっかり顔から熱気が消えていくのを感じながら、ふたたび視線を落とす。ああ、惨めだ。





「…土屋、さ」
「はい」
「こっち向いて」
「はい」

さっきよりはいくらかはっきりした声に呼ばれ、素直に顔をあげるとふわり、と優しい感触。




「寂しくなっちゃった?」

優しくて穏やかな瞳が、自分を捕える。
何万回と見てきた顔のはずなのに、どきり、と心臓に走った衝撃を感じて、やっぱ惚れてるなあ、とぼんやり思う。



「…ごめんね」
「…いえ、僕が悪いですから」
「え?」
「塙さんがそういうこと軽はずみに言えない人っていうのは知ってます、すみません、わがまま言って」
「土屋」
「気にしないでください、えっと…」
「土屋」
「……はい」


前髪を耳にかけた左手を、塙さんの手が包む。
にこりともせず、息がかかる距離まで近づいて、ゆっくり、唇が動く。



「愛してるよ」
「!」
「誰より愛してる」
「、塙さ…」


気絶しそうなほどに甘く口付けると、くせのついた俺の髪をふわり、と撫でる。




「…俺は決まりきってることを言いたくないだけだよ」
「はあ…」
「別に言ってもいいんだけどね?嘘っぽくなるの嫌でしょ」
「…………」


昔から、そうだ。
塙さんは頑固だけど、筋の通った考えを持っていて、結局は俺が負けるようになっている。
悔しいけれど、仕方がない。
いつだって彼は隙がない。


反論を失った俺は、わかりましたよ、と言って手をのける。

不服そうな俺を見て、塙さんはにやりと笑う。
そんな顔だってね、
大好きなんですよ。



「…でも土屋くんが喜ぶなら話は別かな」
「えっ」
「ねえ、世界で一番大好きな土屋くん、機嫌直してよ」
「え、あ、」
「でも怒った顔も可愛いね」
「は、塙さん!」



「…なに?」
「…………やっぱりいいです…」「顔真っ赤だもんね」
「……知りません!」






まあまあ、と宥めてから
触れるだけのキスをされた。

未だにおさまらない鼓動の高鳴りを感じながら、
結局俺はこの人に一生かなわないんだろうな、と観念したように目を閉じた。






アンフェア・ゲーム
(どうしても不利になるのです)


(だってそうだ)

(俺のが貴方を愛してる)




――――――――――――――

初騎士作品

つっちーは
塙→←←←←←←←←土屋だと思い込んでるけど実は塙さんもかなり惚れ込んでるよっていう


お題元:HENCE




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