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ロマンスの悪魔に懇願




どこに行ってもきらびやかなイルミネーションが目障りだ。
(別に、つい先日彼女と別れたことはこの苛立ちとは関係ない決して。)

もともとクリスマスみたいに浮き足立つイベントは好きではない質だが、それにしても収まりの効かないこの不愉快さは隣でやたらと上機嫌に稽古をするこの男のせいだろう。




「いやークリスマスだよ若林くん」
「だからなんだよ」
「いやーね、今日はいい夜になりそうだよ」
「あっそう」
「もう一回連絡しとこうかな」


つい先日いい感じの子が出来たとかなんとか言っていたが、まさに今夜、本人曰くチャンスだそうだ。
だらしない笑顔のまま携帯をいじる春日は今まで見た中で最高記録かってほど気持ち悪い。




「…そいじゃ、今日はもう終わりで」

手短に一通り練習を終わらせてから言うと、見たこともないような嬉しそうな顔をした。

「おうお疲れ!じゃあな若林」
「………おう、」



早々と上着を着込んで身支度を済ませると、えらい早さでドアを開けて出て行った。
思いきや、ため息をつく暇もなく、ひょっこり顔だけ出してまた気持ち悪い笑顔で手を振ってきた。




「彼女出来たら、紹介するわ」
「………うん」


じゃーな、と言うと豪快な足音が聞こえて、さらに原付が去っていく音がした。


なんでそんなこと言われなきゃいけないんだよ。
別に紹介してほしくねーわ!
稽古しっかりやってから言えバカ野郎!





重なる苛立ちにダメ押しするかのようにタイミング悪く降ってきた雪のせいでさらにテンションが下がる。
今夜は酒でも飲むかなと上着を着込んで、聖夜に毒づいた。






ロマンスの悪魔に懇願

(大体この感情はなんなんだ)





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5年前くらいをイメージして

お題元:Chien11





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