JUNK
夕暮落とし穴。
「なあ、それいつ終わんの?」
「終わったら」
「…(え、今のって答え??)」
「お前、今日部活ないだろ。さっさと彼女のとこ行けよ。愛想尽かされるぞ」
「…昨日ふられましたー」
「ああ、だから今日一日死人みたいな鬱陶しい顔してたのか」
「…お前、思いやりって言葉、知ってる?(普通、凹んでるダチに死人とか鬱陶しいとか言わないだろ!)」
「知ってることと実践することは違う、って知ってるか?」
「……少しは慰めろよ(期待したオレが馬鹿だった)」
「慰めたら拗ねたのはどこの誰だったかな」
「(昔のことは忘れろよ!)…あ゛ーっ、くそ、何で付き合って下さいって言われたのに一ヶ月でふられるんだよ。わけわかんねー」
「そりゃあ、水曜以外は月曜〜日曜まで全部部活。登下校は別々だしメールも自分からは送らない。他校の上にお前がモテるから不安も不満も山積みだろうに、それで振られなかったら恋人じゃない。女房だ」
「……でも、オレの生活が部活中心なのは最初に言ったし、あいつだってそれでもいいって言ったんだぞ」
「知ってることと実践することが違うように、頭の考えと心の感情は違うんだよ。最初はお前がどんなに忙しくても好きだから大丈夫だと思ってたけど、実際付き合ってみたら関係が薄過ぎて耐えられなかったんだろ」
「……そんなに酷かったかな(あいつのこと、もう好きになってたのに)」
「…お前はお前なりに彼女を大切にしてたよ。彼女が寂しさに勝てなかっただけだ」
「……………(マジで…??)」
「…何だよ。慰めろって言ったのはお前だろ」
「そうだけど。オレ、あいつにお前のことが好きなんじゃないか、って言われたんだ」
「お前?」
「委員長…っ、ぃだッ?!(スティックのり投げつけやがったこいつ!!)」
「お前、俺が男だってちゃんと言ったのか」
「‥は?? そんなの言わなくたってわかるだろ」
「わからないだろ。男が女を役職で呼ぶのは珍しくないし、こっちは向こうと違って共学だぞ」
「……お前のこと好きなのかなぁ」
「…どうしてそこにいくんだ。友達としての好きだろ」
「ん〜〜〜」
「悩むな(こんなことで簡単に惚れられて堪るか)」
「オレ、女と長続きしないのは男が好きだからなのかな…って、何だよその顔」
「バスケ馬鹿かと思いきや、勉強も割りと出来るのに、阿呆は阿呆なんだなと思って(コイツを好きな俺も相当阿呆だが)」
「…へぇへぇ、顔も頭も運動もパーフェクトな委員長様に比べたら、オレなんて道端の石ころですよっ。阿呆の子ですよ! 痛ッ!!」
「騒ぐなら帰れ」
「(今度は定規かよ!!)…マジで帰ったら寂しいくせにー」
「勘違いって素敵だな」
「(キーッ! 鼻で笑いやがった!!)まだ終わらないなんて手際が悪いんじゃないんですかー??」
「わざとだ」
「は? わざと?? …何が??」
「ゆっくりやれば、お前といる時間が長くなるだろ」
「…、な、なに言っちゃってんの」
「冗談だ。本気にするなよ」
「し、してねーよっ! するわけねーだろ!!」
「顔が赤いぞ」
「?! べ、別に照れたわけじゃねーかんな!! 勘違いすんなよ!(やばい顔熱い!! 何だよこれっ?!)」
「(説得力皆無の顔で否定されてもな)」
――――さあ、落とし穴まで、あと一歩。
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