1. 撫 「お前はかわいいなあ〜。なあ、エブリバ?」 「にゃ〜」 「かわいいのは知流様の方です!! ボクのことも撫で撫でして下さいっ!!」 「煩い」 「ああんっ、知流様!! その冷たい眼差し、イッちゃいそうですっ!!」 「…にゃ、っ……」 「皆川(ミナガワ)黙ってろ。エブリバが気味悪がってんだろ」 「ああんっ、素敵!! もっと蔑んで下さい…っ!!」 「…賢聖、この馬鹿ちょっと遠ざけてくれ」 「……まだその猫撫でるのかよ?」 「当然。皆川がどれだけウザかろうがキモかろうが、エブリバに罪はない」 「…………」 「服見に行く約束も、お前ん家に泊る約束も、忘れてねえけど?」 「‥わかった」 「ちょっ、触らないでよ汚らしいっ!! ボクに触れていいのは知流様だけなんだからっ! やっ、いやです知流様! やっと会えたのに…ッ!!」 「俺はエブリバにしか会いたくなかった。…つーか、そんなに蔑まれたいなら賢聖に頼めよ。ほんの一ケ月前まではそうだったんだから」 「いやですっ!! 絶対、死んでもいやですっ!! こんなウザくてヘタレなウザヘタ虫なんかに蔑まれても、一ミリだって濡れませんっ!! 知流様じゃないと勃たないんですっ!!」 「てめぇ、勝手にチハルで勃たせやがったら、潰すぞ」 「……エブリバ、どうして二人共こんなに変わっちまったんだろうな……両方共俺の所為っちゃあ俺の所為なんだけどさあ……」 「にゃあ〜」 ※皆川…「季節」に登場した賢聖の元セフレ * * * * * 2. 倒 「…、………何してんの?」 「見りゃわかんだろ。倒立」 「…いや、確かにわかるけど。何で倒立なんかしてんだよ。体育の宿題?」 「お前、サボるにも程があんだろ。高校生に倒立の宿題なんか出ねえよ」 「じゃあ、何で?」 「筋トレ」 「…それ以上鍛えてどうすんだよ」 「別に、身体が鈍らないようにしてるだけだ」 「今のままでも鈍らねぇんじゃねぇの?」 「…前に比べれば、喧嘩の数も減ったし」 「逆だろ? 『狂犬』だって気付いた雑魚共が喧嘩吹っ掛けて来やがるから、前に比べて増えたんじゃねぇか」 「…定期的に身体動かさねえと、落ち着かねえんだよ」 「‥‥チハル?」 「…………煩ェな! お前がしょっちゅう俺を押し倒すから、こないだの喧嘩であっさり押し倒されちまったんだよ!!」 「!!??」 「お前は強引なくせに妙に優しいから押し倒したって俺に怪我させることはねえけど、俺に恨み持ってる奴らが俺を丁寧に扱うわけねえだろっ!?」 「チハ、」 「わかってんだよそんなこと!! でもお前が毎日のように押し倒すから、まともな受け身取るの忘れて肘と腰を思いっきり打ったんだよ!! ‥っ、二度と押し倒されて堪るかッ!!」 「――チハル、それ、初耳なんだけど。どこのどいつ?」 「知るか!! 知りたきゃ病院行って見て来い!!」 * * * * * 3. 舐 R12 「チハル」 「………」 「チハル、朝」 「………」 「起きないのか?」 「…ん……んん、…」 「もう八時だぞ」 「や、あ…っ」 「チハル」 「ッ、?! 賢聖っ!!」 「おはよう」 「おはようじゃねえ! 起こす時に耳舐めんなって言ってんだろうが!!」 「起きないチハルが悪い」 「起こし方が悪ィんだよ!! 普通に起こせ!」 「起してる」 「どこがだっ! 肩揺するなり叩くなりしろって言ってんだよ!!」 「いいのか? チハルに触ったら、止まらなくなるけど」 「…!? 耳に触ってんじゃねえか!」 「手では触ってない。手で触ったら、起こすだけじゃ終わらない」 「…っ、退け!! 顔近付けんなっ!!」 * * * * * 4. 囁 「知流様! 今日も最ッ高に素敵です!!」 「…エブリバがいないなら声かけんな」 「ああ‥っ、知流様!! 腰が砕けてしまいそうです!!」 「…砕けちまえ。ついて来んな」 「はぁあ…!! 知流様のお声は南国の果実よりも甘美です‥っ!!」 「……………」 「イッちまえよ、淫乱。なんて耳元で囁かれたら…っ、ああっ! 想像しただけでイッてしまいそうです!!」 「……………………」 「知流様、今日もあのヘタレ犬とお会いになるのですか!? たまにはボクの家でゆっくりお茶でも…っ、痛ッ!!」 「オレのチハルに気持ち悪ぃ身体寄せてんじゃねぇよ」 「ウザヘタ虫‥っ!! お前こそ気持ち悪い身体で知流様を抱き寄せるんじゃないよ!! 汚らわしいっ!!」 「チハル、オレん家で雑菌洗い流そ」 「ぁああっ、知流様の耳元で囁くな!! 雑菌はお前の方だろ!!」 「……………………………」 * * * * * 5. 挿 「………いつまで読んでんだよ」 「読み終わるまで、ってさっき言わなかったか?」 「いつ読み終わんだよ」 「さあな」 「…つまんねぇ」 「お前も何か読めばいいだろ」 「何でチハルといるのに本なんか読まなきゃなんねぇんだよ。つーか、チハルの本は難しくて読む気しねぇ」 「…そんなに難しくねえだろ。お前、成績は悪いけど頭は悪くねえんだし」 「文章ばっかで挿絵の一枚もねぇじゃん。無理、ってか嫌だ」 「じゃあ黙って待ってろ」 「わかった。チハルに悪戯しながら黙って待ってる」 「そんなにハードカバーの本の固さを体感したいのか?」 * * * * * 6. 抱 「……チハル」 「煩い」 「…チハル」 「煩い。寝ろ」 「………」 「っ、おい!」 「抱きつくならこっちだろ」 「何でだよ! 抱きつくなら抱き枕に決まってんだろ。お前じゃない」 「チハルが抱きついていいのはオレだけだ」 「んなわけねえだろ。返せ」 「嫌だ」 「賢聖」 「嫌だ」 「……………」 「…嫌だ」 「……お前には俺を抱きしめていいっていう特権があんだろうが」 「!」 「抱き枕くらい許容しろ」 ※「6倍数の御題」様より6つの表現する一文字の御題3 FIN * CHAP |