1. 座 「チハル。‥チハルチハルチハルチハル」 「…………」 「なあ、おい、チハルってば」 「…………」 「無視すんなよ」 「重い煩い暑苦しい。抱きつくな離れろ体重かけんな」 「嫌だ」 「力強く即答すんじゃねえよ。課題終わるまで部屋入って来んなって言っただろ。出てけ」 「嫌だ」 「‥っ、おい! 賢聖!」 「…………」 「…人を勝手に膝の間なんかに座らせてんじゃねえよ」 「チハルを閉じ込めただけだ」 「……邪魔しやがったらマンションの廊下に正座させるからな」 * * * * * 2. 隠 「賢聖、俺に何か言うことがあるだろ」 「一生ヤりたい」 「ざけんな。てめえ独りでヤッてろ」 「無理。チハルじゃなきゃ勃たねぇもん」 「もん言うな気持ち悪ィ。…俺に隠してることがあるだろ、って言ってんだよ」 「、………………」 「何だその顔は。思い当たる節が多過ぎて何の事だかわからないってか? あ゛?」 「…何も隠してない」 「俺の目を見て言え」 「っ‥、…………ごめん」 「一昨日、俺の後輩を脅してくれたんだってな? チハルに近づくなとか何かしたら殺すとか言って。…俺、店には来るな、店長やバイト仲間には関わるな、って言ったよな??」 「…ごめん」 「ごめんで済んだら六法なんて要らねえんだよ。このクソ忙しい時期にかわいくて素直でよく働く後輩が辞めたらどうしてくれんだ」 「!! かわいいって、チハ、」 「ぁ゛あ゛??」 「‥ごめんなさい。……ごめん、チハル。許して。もう二度としないから」 「…一週間、立入禁止」 「!!?? そんっ、」 「一ヶ月にされたいのか?」 「チハルっ!!」 「……アイツに直接謝ったら許してやるよ」 * * * * * 3. 震 「……帰るぞ」 「何で。映画観るんだろ」 「何でじゃねえよ。そんな身体で映画観られるわけねえだろうが。馬鹿か」 「馬鹿じゃない。平気だ」 「バレバレの嘘つくな。熱高いし顔赤いし、震えてんじゃねえか」 「震えてない」 「‥無理すんじゃねえよ。映画なんていつでも観られるだろ」 「…チハルが付きっきりで看病してくれるなら帰る」 「……大人しく寝ろよ?」 「チハルが添い寝してくれるなら」 「甘ったれんな馬鹿野郎」 「‥チハル、手、繋ぎたい」 「……泊まってやるから一日で治せ」 * * * * * 4. 叩 「お前は俺のクラスメイトを一体何だと思ってるんだ?」 「チハルに群がる害虫」 「幼稚園からやり直して来やがれ自己中男」 「チハルがいないから嫌だ」 「………まあ、お前がクラスメイトと笑い合う姿なんて気持ち悪くて想像もしたくねえけどな」 「オレは有象無象に笑いかけたりしない」 「………お前には理解出来ないかもしれねえけど、話しかける時に肩を叩いたり、体育のゲーム中に背中を叩いたりするのは極普通のことなんだよ」 「チハルに触れていいのはオレだけだ。他の奴が触れるのは許さない」 「お前の許可なんか求めてねえよ」 「チハルはオレのだ」 「‥そういう問題じゃねえっつーんだよ…。とにかく、殴ったり蹴ったりするのはやめろ」 「あいつらがチハルに触らなきゃ何もしない」 「…今度俺のダチに怪我させたら病院のベッドとお友達にしてやるよ」 「!!? …努力する」 * * * * * 5. 眺 R15 「…、いい眺め」 「んっ‥‥は、ぁあ…ッ」 「チハル、気持ちいい?」 「っ、き、くな…っ」 「嫌だ。聞きたい」 「やっ…、んあっ……ふざけ、な‥っ」 「聞かせろよ、チハル。気持ちいい?」 「こ‥っ、の、…!」 「オレは、すげぇ気持ちいい…ッ、このまま、死んでもいいくらい」 「…、ばか、言ってん、じゃ、ねェ‥っ、よ……そう簡単に、死なせてやるわけっ…、ねえ、だろ…」 「ッ、チハル…!」 「ひぁっ、アッ…! …けんせぇ、ちょっ‥、ま…ッ、ぁああっ!!」 「‥オレので喘いでるチハル、すげぇかわいい」 「…っ、だま、れ…!」 「ッ‥チハル、写メっていい? エロくて最高の眺めなんだけど」 「いいわけねえだろ!!!」 * * * * * 6. 走 「チハル!! チハル、火傷したって…っ!」 「?! お前、この雨の中、傘もささずに走って来たのか‥?」 「当たり前だろ!!」 「いや、当たり前って…」 「それより火傷だ! 手のどこに、どの程度火傷したんだ?! 大したことないって、本当に、」 「本当に大したことないんだって。落ちつけよ、賢聖。靴脱いで上がれ。今風呂沸かしてやるから」 「チハルっ、」 「聞こえなかったのか? 靴を脱いで上がれって言ったんだよ。…風邪ひくだろ」 「……病院には行ったのか? 薬は?」 「病院には店長に連れてってもらったし、薬も受け取って来た」 「痕は? 残るのか?」 「言われた通りに薬塗ったりガーゼ交換したりすれば残らねえって」 「…良かった……」 「ほら、バスタオル。あったまって来いよ」 「店長は?」 「は? ‥俺を家に送った後、店に戻ったけど」 「わかった。ちょっと店長殺って来る。あ、お風呂は入るから」 「待て待て待て! さらっと物騒なことほざいてんじゃねえよ。帰るな、出るな、ここにいろ」 「チハルが一緒にお風呂入りたいって言うなら、いてもいい」 「ばっ、誰が‥! …、…ああ、そうだ。一緒に入りたい。手が使えないから頭を洗ってくれ」 「身体も?」 「っ、……身体も。だから家にいろ。店には行くな、一生」 ※「6倍数の御題」様より6つの表現する一文字の御題1 FIN * CHAP |