恋愛、詩、短編
指。(短編小説)
いつからだろう。
僕があの人の指を食べたくなったのは。
舐めたいわけじゃない。
くわえたいわけじゃない。
食べたい。
あの人の指を食べたら。
肉は、僕の血に??
かわるのだろうか。
そして。
あの人の骨を食べたら。
僕の骨に??
僕の身体になる。
あの人が。
指。指。指。
指。
指でなくてはいけない。
僕は必要以上の言葉しかあの人と交わした事がない。
恋。
憎しみ。
この僕の感情はなんという言葉で。
言葉??
あなたの書く文字を覚えてしまう。
覚える気もないのに。
あなたの指ばかりに目が行き、
そして、僕は頭の中であなたの指を食べる。
味は??
味は知らない。
あの人の声。
声。声。
聴きたいのか??
耳は閉じれないので聞こえてくる。
喉を食いちぎりたいとはおもわない。
指ばかりに目が行き。
僕はあなたの指をいつも頭の中で食べる。
あなたの字は決して綺麗なわけじゃない。
いつも、走るように文字を連ねる。
あの人の皮膚はどれだけの厚さがあるのだろう。
本当には、知らない。
いつからか。
私の指に痛覚が走るようになったのは。
指。指。指。
職病柄だからだろうか。この痛みは何??
痛みだけでも……。
これは何??
僕は人の輪の中に入るのを嫌う。
だけれど、はみださない。
適度の距離を保つ。
今日。
なぜか。
今日。
今日だと感じた。
「あなたの指が食べたいんです」
あの人とすれ違いざまに言ってみた。
「えっ??」
あなたは僕の方に振り向いた。
あなたは僕を優秀な生徒だという。
僕は心の奥から微笑んだ。
あなたはわからずに笑顔を返してきた。
いずれ僕達は土にかえるね、先生。
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