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ショートケーキの食べ方

小さな事が噛み合わなくて今日もケンカをする。
だが、もうそれは日常の一部になっているせいか、誰も止めようとはしない。
と言うより、この場にはハルと獄寺の二人だけなのだ。
本来ならば遊びに行く約束をしていたはずが、獄寺の寝坊により遠出は中止。
不機嫌なハルの機嫌を取ろうと連れてきた先はラ・ナミモリーヌ。

「おい、アホ女。好きなの選べ!!」

「いらないです…。」

不貞腐れたハルは要らないと言うが、チラチラとケーキを眺める。
その行動に獄寺は楽しそうに少女を見る

「じゃあモンブ…ショートケーキで!!」

「ハル、お前の好きなヤツはモンブランじゃねぇか?良いのか?」

普段なら、迷わずモンブランを選ぶハル
だが、珍しい事に少し考えてショートケーキに変更した。
その事に疑問を感じたらしい獄寺は、ハルに聞くが彼女は『良いんです』と言う。



白く輝く生クリームの海に浮かぶ小さなホイップの島々。
その中でただ一つ、ルビ―のような赤い艶めきを魅せるイチゴ。
フォークをスポンジに突き刺すと、フワリした感覚。
掬われて小さくなったケーキの欠片を口に運ぶ。

「ん〜、やっぱりケーキは美味しいです!!」

笑顔になるハル。
獄寺は、そんなハルを見て安心したのか、ケーキに手を着けようとした。
だが、

「はひっ!?ちょっと待ってください!!」

「あぁ?」

「獄寺さんは一番最初にイチゴを食べるんですか!?」

信じられません!!と批判を始めるハル。

「別に関係ないだろ、先に食べようと後に食べようと。」

「はひー!?何言っているんですか!?一番最後のお楽しみが無くなっちゃうじゃないですか!!」

ハルのイチゴに対する熱弁を置いて、パクリと口の中に飛び込んだイチゴを見て、声を挙げる。

「一番最初に食べないと酸っぱくなるんだよ!!」

そう言って獄寺は、残されたスポンジと生クリームの海に埋もれたイチゴをフォークで啄み始めた。



ショートケーキのイチゴを
一番最初にに食る彼、
一番最後に食べる私。
どっちが甘く潤うかなんて……。





昼下がりに純粋な甘酸っぱさを…。






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あきゅろす。
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