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#優しい夜は…

今日も昨日も一昨日も…ここ数週間、隼人さんの帰りが遅くて寂しいです。
でも、そんなことは口が裂けても彼には言ってあげません!!
きっとあの人は、困った顔してハルに謝るんです。




独りで眠る夜は冷たくて、寂しくて…
早く帰って来てほしいと願いながら眠りに就きます。
だけど、今日はベッドに入って2時間も経つのに一向に眠気は感じられません。
やはり、お昼寝をしてしまったのがいけなかったのでしょうか…。
いくら寝付こうと挑戦しても、ぱっちり開いたお目めは、全く閉じる様子もありません。
ベッドに埋もれた身体を起こし、少しでも眠気を誘うためホットミルクを飲もうとリビングへ。



冷蔵庫から今日、買い物に行った時に買っばかりの未だ封の開けられていない牛乳を取り出し、鍋で軽く暖めてはちみつを入れ、彼と色違いで買ったお揃いのマグカップにそれを注ぎます。


ゴクリ。一口、口に含み飲み込むとほんのりと暖まった甘味漂う牛乳の味が口の中に広がり体の力が少し抜けていくのをかんじました。
時計を見ると、もう2時をとっくに過ぎていて…なのに、彼は未だに買えって来ない。
隼人さんは、毎日こんな時間までずっとお仕事頑張っているのに、ハルには先に寝てろって言うんです。
だから寂しがっちゃってちゃいけない。
頭では分かっているのに、ハルの心は…気持ちは…とても正直で、胸が悲鳴を挙げて目にジワリと涙が浮かぶんです。

ボーッとしていると、玄関の方で鍵の開く音がして、隼人さんが帰って来たことに気づきました。
感傷に浸っている顔がバレるのが嫌なのと、起きていて彼に気を遣わせるのが嫌で慌ててソファに寝た振りを決め込んで
ガチャリと開くリビングのドアと彼の足音を聞きながら、今更だけど自分が仰向けになっていることに後悔をした。
ソファのすぐ横で停まる足音。

「アホ女」

帰って来ての第一声がアホ呼ばわり!?
ハルの耳に届いた言葉は、『ただいま』とか『帰った』とかではなく予想外の一言
そしてその後に聞こえて来た小さな溜め息と呟き。

「お前、独りで泣いてたのかよ。頬に涙の跡なんかつけて。」

そっと頭に彼の手が頬に触れ優しく撫でながら続ける。

「ハル、何時も寂しい思いさせてごめんな。夕飯も、寝る時も…ずっと独りぼっちにさせて悪ぃ。」

………悲しそうな声でそんなこと言わないで下さい。ハルは隼人さんに何もしてあげる事など出来ていないんですから。
そう実感してしまうと悔しくなる。
私は彼から沢山の気持ちや幸せ、愛を貰っているのに私が返せているものは無いのではないか…と。

「ハル」

名前を呼ぶ声。
さっき迄頬を撫でていた大きな手が離れていくのを感じる。
あぁ、彼は遠くへ行ってしまうんではないかという不安に駆り立てられる。
無意識か、意識的にか彼に向けて伸ばした手は捕まえられ強い力で引っ張られ体が起こされる。
あまりに突然な事に驚き、目を開けるとそこは彼の腕の中でハルの手はしっかりと隼人さんのスーツに皺が出来そうな程強く握りしめていました。

「アホ女、寝た振りなんて出来ねぇ癖に。んなことしてんな。」

「ハルは…アホ、女なん…かじゃ…っないですっ」

久しぶりに感じた彼の温もりのせいでしょうか…涙が溢れて止めたいのに尽きることなんか知らない見たいに零れるんです。

「お前、アホ女って言った瞬間眉がピクッて動いてんだよ!!」

「……………っ」

「毎朝無理した笑顔で送り出して、帰って来ると眉間に皺寄せた寝顔しやがって…寂しんならちゃんと言え!!じゃないと、俺の方が寂しいだろ。」

「ハルは…寂しいっです。はや、っとさん…と、一緒にっいれ…なく、て…でも、毎晩…ちゃんと、電話くれて…ハルは、隼人さんの邪魔に、なりったくなぃ…です。」

嗚咽で途切れ途切れのハルの言葉。

「お前なぁ…何時ハルの事を邪魔だなんて言った。まず、好きじゃなきゃ結婚なんてしねぇよ。」

「はひ…。でも!?ハルは、沢山の幸せを隼人さんから貰ってるのに…。ハルは…何にも隼人さんに返せてないんです!!」

「バーカ。だからアホ女なんだよ。俺だって沢山の幸せを貰ってるよ!!
それに………お前は、俺に大きな感情を与えてくれただろーが!!」

「はひ?」

「お前がいたから愛を知ったって言ってんだよ!!」

「はひーっ!?隼人さん、恥ずかしいこと言わないで下さい!!」

「おまえ………はぁ」

昔なら絶対に言わないような台詞が彼の口から零れたことで、溢れていたはずの涙はいつの間にか止まっていた。
ギュッと抱き締めて腕を回していた彼の背中は、昔よりとても広くて…隼人さんに出会った頃には想像もしなかった今が、何よりも大切で愛しく感じる。

「ハルは、隼人さんと出会えて良かったです。ハルも、隼人さんに愛するキモチを教えて貰えましたから…。」

そう言って見上げると、彼は優しく微笑んでいた。





どうしても寂しい夜は、貴方を思って眠りに就くけど…やっぱり本物には勝てないんです!!
貴方を一番感じていたくて…。






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あきゅろす。
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