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次はキミの隣で。かな様へ

何処に行きたい?

何を見たい?


3年前、そんなことを楽しそうに話す彼らの後姿がとてつもなく羨ましかった。


「ねぇ、獄寺さん。何処を見たいですか?」

彼の隣を歩けることが嬉しくて、私ははしゃぐ。
彼は、そんな私にお構いなしに毎月愛読している不思議な生物を中心に特集する某雑誌に夢中。
ハルの片手にはもうすぐみんなと一緒に行く北海道のガイドマップが握られていて。
色とりどりのページには、ハルのお気に入りの色とりどりの付箋が張り付けてあり、自分がいかに学校行事であるこの旅行を楽しみにしているのかが一目瞭然。

中学校の修学旅行は、並中も緑中も場所は京都で一緒だったのだけれど、日にちが合わず、ハルが自由行動の日に、獄寺さんは集団行動の日で、会えないのかとガッカリしていたら、運よく夕方に行った清水寺で彼の姿を見つけて、その時物凄く嬉しくて友達に一言断って理由も言わず彼の元へと駆け出した。

清水の舞台から、京都の町々を一人眺めている彼を見つけて、背中に回って小さく息を吸い込んで

「獄寺さん!」

そう声をかけると、彼はきれいに輝く銀髪を揺らして振り向いてハルの姿を見つけると、大きく目を見開いて何も言わず驚いていた。

「こんにちは。」

「・・・・・・。」

「偶然ですね!!獄寺さんを見かけたんで、着いて来ちゃいました」

「あ、あぁ。お前一人か?友達は?」

「あぁ、友達なら今みんな、さんねい坂でショッピング中です!!」

「いいのか?戻らなくって」

「はい!みんな選ぶの遅いですし、ハルはもう買い物一通り終わっちゃいましたから。」

『そうか』という獄寺さんの表情は、わずかに赤みを帯びてきた京都の空に照らされて、ハルの見間違いなのかもしれないんですけれど、少し寂しそうに笑ったような気がして気持ちがギュッってなった。

「獄寺さん、ここのお寺に地主神社って神社があるんですけど、行ってみませんか?」

彼と何か、一つでいいから京都の…修学旅行の思い出が欲しくてさっきみんなと一度行った場所へ彼を誘った。
すると彼は、いやな顔一つせずに頷いてくれた。


「この石とあそこにある石って対になっていて、2つの石の間を目を瞑って歩いて、もう片方の石に辿り着けると、その人の恋は、叶うんですって!!途中で誰かに助けてもらうと、助けてくれた人が実は恋のキューピッドなんだそうです!!」

友達から聞いた受け売りなんですけどね。
と付け加えて、ちらり見ると

「やらねぇのか?」

と聞かれて、くだらないと言われると思ったハルには、衝撃的な言葉だった。
彼の言葉は、やってもいいと言っているのだけど、少し込み合っている敷地内でそんなことをやっても叶うわけはないことくらい目に見えていて、どうしてもやりたいとは思えなかった。
でも、やろうと思ってもやりたくないのは多分目の前に彼がいて恋は叶っているけれどいつかこの愛が消えてしまうのが予言されてしまうかもしれないなんて頭の隅っこでコッソリ思い浮かべてしまったからかも知れない…。
黙ってうつむいてしまった私を不思議に思ったのか、彼は私の顔を覗き込むのだけど、私は顔を反らして良いんですと笑った。

「なぁ、俺やってみてもいいか?」

「はひ?」

突然の彼からの申し出。
意外すぎる彼からの言葉に、私は唖然とした。
彼の性格では、絶対そんなこと言うのはアリエナイ!そう思い込んでいたから。

「んじゃ、お前ここにいろ」

「あ、はい」

返事をまともに返す前に彼はもう一つの石に向かって歩いていき、私までの距離を確認して目を瞑る。一歩彼が足を踏み出す。
それを見ている私の心臓が同意に強く鼓動を鳴らす。

一歩、また一歩。
『途中で目を開けたら成就しないんだって〜。』
友達が言っていた言葉が頭の中を反芻する。
最初は、まっすぐ踏み出した獄寺さんの足が少し右寄りに傾く。彼に声をかけたいけれど、声をかけてはいけない。
ほんのわずかな距離なのに待つのって何でこんなにももどかしいのだろう。
結果が見たいような見たくないようなそんな気持ちで、下を向いて彼から目を逸らそうとしたら、彼の歩先は私の待つ石のほうに向ってきて、ゴールに彼が辿り着いた瞬間私から抱きついた。

「凄いです!!獄寺さん!!」

「お、おぉ。」

いきなり抱きついて照れる獄寺さんは、多分テンパっていて、私は嬉しくってもっとギュっと抱きついてしまった。
そのあと一緒にペアのお守りを買って私たちは、地主神社を後にした。

あの後すぐ、携帯にそろそろ帰って来いと電話が掛かってきて私たちはまた離れ離れになってしまったのだけれど、別れ際にハルのデジカメで清水の舞台から獄寺さんと一枚だけだけれど写真を撮った。

戻ると待っててくれた友達たちに、『遅い』と言われてしまったけれど、その後に
なんか良いことあったの?
と聞かれて、ハルはニコニコになって

「はい!ハル今超ハッピーです!!」

と、答えた。
でも、やっぱり彼女達に獄寺さんと会えたことは秘密にしちゃいました。



「何一人で笑ってんだ?」

「はひっ!?」

「見られてたことに気付ねぇのかよ」

「はい、全然でした。」

正直に答えると、彼の口からは呆れたような溜め息一つ。

「で、何がそんなにニヤニヤするほど嬉しかったんだ?」

「失礼ですねー。『ニコニコ』と言ってください!!レディに対して失礼です!」

訂正しなきゃ教えてあげません!!
そう言うと、彼は『別に興味ない』なんて言いつつも訂正するのだから、思わず可愛いなんて思ってしまう。

「で?何なんだ」

「中学校の修学旅行を思い出していたんです。」

「?」

「あの時はほんの少しの時間だったけど、獄寺さんと会えてハルにとっては叶わなかったはずの願が叶って凄く嬉しくて幸せでハッピーだったなぁ…って!!」


バーカ、今度はずっと一緒にまわれんだろ。アホ女。
と彼は言って、困った様な眉間をしつつも薄らと頬を染めていた。



一緒に見る景色は

一人で見るときよりも

何倍も輝いて見えるんです。







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あきゅろす。
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