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ボカロ図書館
モノクロタブレット 第2話
彼女は歌った
悲しみの街の中で



ルカさんに銃の扱い方を教わってずいぶん上達した
リンも上手くなって嬉しそうにしてる
「ルカさんに教えてもらって良かったよね〜」
ミクは部屋に戻りながら話す
ルカさんは別のフロアに用があるから射撃場で別れた
「ルカさんはどうして銃を扱おうと思ったのかな?」
僕の中で次から次へと疑問が沸いてくる
「来るべき時の為じゃないの?」
「自分の身を守るためって言われてすごく怒っていたから」
「そうだよねー」
リンも首を傾げている
「だけど今は悩んでも仕方ないと思うよ」
ミクの意見はごもっともだ
今は悩んでも仕方ない
僕達は晩御飯を食べようと食堂へ向かった
「よう、お前ら」
話しかけてきたのは中崎のおじさんだ
「部屋にいないと思ったらさっきまで射撃場にいたのか」
「ルカさんに教えてもらったんだ」
僕は少し自慢気に話した
「おぉルカか!」
「ルカさんも来るべき時が来るの?」
中崎のおじさんは少し困った顔をした
「まぁ来るだろうな」
「やっぱりそうなんだ」
ルカさんがここを去るときが来ると思うと残念な気持ちになる
「仕方ないよね」
「まぁな、ルカは銃の腕前はすごいしな」
そんなこと話してると食堂に着いた
「今日はじゃがいもを蒸かしたものを塩で味付けしたんだって」
食事の先見隊?であるミクが確認してきた
「じゃがいもはおいしいよね」
リンは頷く
「ミク姉はネギかけるよね」
「まぁね」
「じゃがいものネギ塩だな」
中崎のおじさんは笑う
「笑わないでよ!私の愛しのヴァニアンなんだから!」
「なんだそりゃ?」
「ミク姉は自分のネギに名前を付けてるんだよ」
僕が補足説明する
「ますますわけわからん」
「いいもん!」
ミクはぷくっと顔を膨らませる
「今日はお前らと飯を食うとするか」
「おじさんも一緒に?」
「たまにはいいだろ?」
「いいよ!」
僕達は声をそろえて言う
リンも親指を立ててアピールする
「研究室にこもりっぱなしで栄養食ばっかだからな。」
「栄養食って?」
「単なるゼリーさ。おかげで歯がボロボロだ」
中崎のおじさんは歯を見せて言う
「おじさん、歯は磨こうよ」
「そういう問題じゃないんだけどな」
中崎のおじさんは笑う
僕達は蒸かしたじゃがいもを食べて部屋へ向かう
「おじさんも来るの?」
「まだ休憩だからな」
「部屋掃除してたかな?」
「掃除のチェックもするか!」
中崎のおじさんは笑う
僕達は部屋に入る
「ジョージ!」
ミクはネギのジョージに水をあげる
「あれがジョージか」
中崎のおじさんは僕達を部屋の中心に呼ぶ
「おじさん?」
「お前らにプレゼントだ」
「プレゼント?」
中崎のおじさんは服からバナナやみかんを取り出す
「おじさん!これって!」
「ちょっとすくねてきた」
「大丈夫なの?」
「ばれてねぇよ!」
なんだか心配
「じゃあ俺はここらで帰るわ!」
「おじさんバイバイ!」
中崎のおじさんは笑って手を振って行った
「おじさんよくフルーツもってこれたよね」
「優しいところが中崎さんらしい!」
リンもうんうん頷く
「偉い人ってどんな食事なのかな?」
「うーん…豪華?」
「大友さんに会ったら聞いてみようかな?」
「レンくんはなんでも気になるね」
「まぁ何だか気になって」
今までこんなに気にすることなかったのに
まるで何も知らない子供みたいだ
「そろそろ寝ようよ」
ミクは言う
リンはふらふらしている
目はトロンとしていて眠そうだ
「うん、寝ようかリン」
リンはゆっくり頷く
布団を敷こうとしたその時
「緊急事態発生!」
「!」
いきなりのアナウンスにみんな驚いた
「下層フロアにて敵の襲撃あり!総員警戒態勢!」
「敵!?」
「一体これは!?」
リンも驚いている
「どうしよう!」
「私に言われてもわからない!」
完全にパニックになる
パニックになったまま数分が過ぎただろうか
「敵は排除されました。通常通りの生活に戻ってください」
そうアナウンスが告げた
「びっくりしたね〜」
「敵ってあの来るべき時の…」
その時中崎のおじさんが入ってくる
「お前ら大丈夫か?」
「おじさん!」
「久々に敵がやってきてな」
「敵が来たってことは…」
「誰かがやられたんだろうな」
「誰がやられたのかな…」
「さすがにそこまではわからん」
「敵を倒したのは?」
「あぁそれはランキング上位者が仕留めることになっている」
「みんな大変なんだね」
「俺も大変だ…。修理しないとな」
「おじさん行くの?」
「まぁな。お前たちも無事みたいだしな」
そう言っておじさんは部屋を出た
「おじさん心配してくれてたねぇ」
「うん」
リンは僕の服をきゅっと握っている
「リン大丈夫だよ」
僕がリンの頭を撫でるとリンはようやく安心したようだ
「敵はどうして攻めてくるのかな?」
「攻撃されたからじゃない?」
「それなら最初から全員で来ればいいのに」
「レンは向こうの味方?」
「違うけど不思議なことがいっぱいで」
「うーん、またルカさんに聞く?」
「うん、また聞く」
「ルカさんまた聞いてくれるかな?」
「聞いてくれたらいいけど」
「まぁルカさんは優しいから大丈夫じゃない?」
「そうだよね」
「とりあえず寝ようか」
リンを見るとホッとしてうとうとしだした
「うん、そうする」
僕達は寝ることにした

「ねぇ母さん」
「どうしたの?2人して」
「リンがトイレって」
「まぁレン、リンを連れてきてくれたの?偉いね、さすがお兄ちゃんね」
「えへへっ!」
「じゃあ母さんがリンをトイレに連れてくるね」
「僕は?」
「うーん、レンはお布団を整えてくれる?」
「わかった!」

「レン…レン!」
「!?」
「あっ起きた」
「えっ?」
「もうご飯の時間だよ」
なんだか懐かしい夢を見ていたような気がする
「ご飯に行こうよ」
リンも服を引っ張ってアピールする
「うっうん」
「まだ寝ぼけてる?」
「大丈夫だよ」
「ふーん」
一体なんの夢だったのかな?
そればかり気にしながら食堂へ向かう
食堂からはいつものように賑わっていた
今日も和食だ
食堂の話題は昨日の事で持ちきりだった
「昨日びっくりしたよな〜」
「敵が来たのよね」
「噂だとあの翔太ってやつのグループらしいぜ」
「あぁあいつらね」
「俺たちはいつになるのかねぇ」
翔太という名前に聞き覚えがあった
「ミク姉、翔太ってあの…」
「翔太?あっ昨日の…」
「彼等がやられたみたい」
「いいざまだよ!」
「言い過ぎよ、ミクちゃん」
そう言ってきたのはルカさんだ
「あっルカさん」
「たとえ嫌でもやられたって事は彼等の命が無くなったって事よ」
「命…」
それは僕達を黙らせるのにはちょうどいい言葉だった
ルカさんは僕達がいる机に食事を置いて座った
「…昨日のアラートで私は敵の排除に向かったわ」
「ルカさんが?」
「来るべき時の話でまだ敵のこと言えてなかったわね」
「うん、ルカさん見たことがなかったって」
「彼等は恐ろしかった」
僕達は息を呑む
「大きさは人間の三倍、真っ黒な体、獣のような体つき」
「どこに僕達と似てる要素があるかわからない」
「そこはなんとも言えないわ」
「…僕達はそんな敵の真っ只中で過ごさなくちゃいけないんだね」
「多分ね」
こんな話が続いたせいかみんなあまり食事が進まない
「あの、ルカさん」
僕はルカさんに尋ねた
「どうして僕達が敵を倒せないだけで敵はここに来るの?」
「失敗したら攻められる理由?」
「うん、そんなことなら最初から来ればいいのに」
「彼等の生命線は私達なの」
「えっ?」
僕達は目を丸くする
「もちろん彼等も食事はするわ、だけど私達が生きてないと彼等も生きていけないの」
「彼等を倒したら僕達も?」
「それは大丈夫よ、私達は彼等から独立しているから」
「どういうこと?」
「彼等にとって私達は生命維持装置のようなもの。あなたは生きるために機械着けてる?」
「ううん、着けてない」
「彼等には私達という生きるための何かを繋げているの。もっとも、それが何かわからないから苦労してるけど」
「僕達と彼等がつながっている…」
リンは僕の顔をのぞき込む
「心配しなくても大丈夫だよ」
リンはご飯を食べだす
「私達って呑気かな」
ミクが言う
「そんなことないわ。本来はいつもこれくらい呑気になれたら平和だけど…」
「…僕達が一気に彼等に攻めることは出来ないの?」
「何故か許可されないのよ」
「どうして?」「少しでも被害を減らすためだって言われたわ」
「逆に増えるような…」
「上層部の考えはわからないわ」
「上層部って…大友さん?」
「そうよ」
「会ったら真意を聞いてみる!」
僕の意気込みとは真逆にルカさんは冷静に答えた
「やめた方がいいわ、どうせ答えないだろうし」
「ルカさんが言うなら…」
僕達はご飯を食べ終えて一旦部屋に戻った
「どうして聞いたらいけないんだろうね?」
僕はミクに聞いてみる
「うーん、何かあるんじゃない?」
「何なんだろうね」
「私に聞かれてもわからないよー」
「そうだよね…」
わかっていることだけどやっぱり気になる
「僕、大友さんに聞いてみるよ」
「えっ、止めた方がいいよ」
「そうかな…」
「ルカさんも止めた方がいいって言ってたでしょ?」
「うん…」
ミクの意見はもっともだ
まず、こんな僕に教えてくれることもないだろう
「午後から何する?」
ミクが尋ねる
「うーん、何も考えてないかも」
リンはミクの袖を引っ張って紙を見せた
「どうしたのリンちゃん?」
紙には「公園」と書かれていた
「遊びたいんだね!」
リンは頷く
「じゃあ上の公園に行こうよ」
「レッツゴー!」
僕はいつもの公園に来た
「レンくーん!早くしないと置いていくよー」
「あっ待ってよミク姉!」
「リンちゃんも早くおいでー」
リンも僕も駆け足でミクのもとへ向かう
「すべり台は私が一番だー!」
「あっ僕だって!」
すべり台を駆け上がろうとしたとき、リンが僕の服を掴んでいた
「先に行きたい?」
リンは頷く
「行って良いよ」
リンは颯爽とすべり台を駆け上がっていく
「なんかおんなじ状況のような…」
そんな事を思いながら僕達は遊んだ
気がつけば晩御飯の時間だ
「楽しかったね!」
「うん!」
リンも頷く
「今日の晩御飯はなにかな〜」
「ミク姉、また見に行くの?」
「まぁね〜」
ミクはまた晩御飯の偵察に向かう
僕達は先に席を確保する
今日は窓際だ
「今日はブロッコリーともやし炒めだったよー」
「早速取りに行こうよ」
僕達は食事を皿に盛って席へ戻る
「いっただきまーす!」
僕達は食事を頬張る
「ブロッコリーを炒めるのはちょっと無理があると思ったけど塩コショウがなんとか頑張ってるね」
「私にはヴァニアンがあるから〜」
ミクはまたネギを大量に入れる
「ミク姉、料理の意味は…?」
「うーん、ネギの供え物かな?」
ミクにはネギ以外どうでもいいようだ
食事を取ろうとしたとき、リンが袖を引っ張って何かを訴えている
「どうしたの?」
リンは窓の外を指差す
その先を見ると、あるビルの屋上に1人の少女が見えた
ここからでは詳しくわからないが黒いロングヘアで白いワンピースのようなものを着ている
少女の視線の先には崩壊したトウキョウの街並みが見える
「あんな所で何をしているんだろ?」
「ん?どうしたの?」
僕の声でミクはようやく外を見た
「ミク姉、あそこに誰かいるよ」
「えっ!危ないよ!」
「♪〜」
僕達の耳に歌声が響いてきた
「歌?」
「あっあれ!」
見ると少女の周りに10人ほどの人だかりが出来ていた
「あれって怪物?」
「あの子危ないよ!」
「♪〜」
しかし、歌声は響く
その歌声に合わせるかのように怪物が正体を表していく
「あれが…きたるべきときの…」
「あの子死んじゃうよ!」
その時、歌声と共にビルは崩れ去って跡形もなくなった
「…えっ?あっビルは?」
「あっビル…無くなってる…」
「地響きした?」
「ううん、歌声だけ」
「一体何が…」
「歌…小鳥が囀り、流れていく雲達」
「ミク姉?」
「そこに広がる大きな大地、みんな生きてる」
何故ミクが歌い出したのかわからないが、あの少女の歌に間違いない
「ミク姉!」
「!」
ミクは我に返った
「えっ…あれ?」
「大丈夫?」
「あっうん、大丈夫」
「ミク姉、急に歌い出したよ」
「私が?」
「うん」
リンも不思議そうな顔でミクを見つめる
「全然記憶が無い…」
「どうしたのかな?リン、あの女の子の声聞こえた?」
リンは首を横に振る
「それにしてもおかしいよね」
ミクが話す
「何が?」
「私達以外はあの子のこともビルのことも誰も気付いてない」
「えっ?」
僕は周りを見渡すが普段と変わらない
とてもビルが崩れた後とは思えないくらい平凡だ
「ビルの様子は?」
「ここからじゃちょっと見えづらいかも…。だけど崩れてると思う」
「何だったのかな…」
「わからないよ…」
少し沈黙が流れる
「とりあえず食べようよ」
「そうだね」
この場の空気をなんとか払拭した
「このまま平和になればいいのに」
ふとミクが言葉を零す
平和で安全な世界
自由に外へ行ける世界
僕だって平和が欲しい
「リン?」
リンを見るとフラフラしている
「どうしたの?」
リンは額に手を当てている
「熱?」
僕がリンの額に触れると確かに熱い
「ミク姉、どうしよう…」
「とにかく医務室へ行こうよ!」
僕達は食事を置いて医務室へ急ぐ
「リン大丈夫?」
「医務室だから…少し下だ!」
僕達は医務室のあるフロアにたどり着いた
リンは僕が負ぶっていく
急いで医務室へ向かいドアを開ける
「先生!」
「ん?どうした?」
「リンがあのっすごく熱くて!」
「どれどれ…」
先生はリンの額に触れたり呼吸を見ていた
「…これは風邪という病気だね。すぐに休ませよう」
先生はベッドを用意してリンをベッドに寝かせる
「リンは大丈夫ですか?」
僕は少し泣きそうになる
「大丈夫。ゆっくりしたら明日にも元気になるよ」
「良かったー」
「リンちゃん!早く良くなってね!」
僕達は医務室を後にして部屋へ戻った
「リン、無理してたのかな…」
「でも元気そうだったけど」
「僕がしっかりしてたなら」
「レン君は何も悪くないよ」
「いつも僕が原因作ってたんだ」
「いつも?」
「えっ?」
自分で出た言葉なのに驚いてる
自然に「いつも」という言葉が口から出た
「リンちゃんが熱出たの私初めて見たよ?」
「あっそっそうだね」
「レン君大丈夫?」
ミクは僕の額に手を当てて、自分の額に手を当てた
「うーん、特に熱は無いみたいだけど…」
「あっ僕は大丈夫だよ」
「それならいいけど…」
ミクは少し不安そうな表情を浮かべる
リンが医務室に行ってからすぐだから当然なのだろう
「僕は本当に大丈夫だよ」
「本当?」
ミクは僕を抱きしめる
「えっ?ミク姉?」
「…」
「あっあの〜」
「ぶふっ!」
ミクはいきなり吹き出す
「えっ?」
「なーにドキドキしてるの?」
「ミク姉っ!」
「あははっ!」
ミクも笑顔が戻った
「今日は遅いし、早く寝てリンちゃん迎えに行こうね」
「うん!」
「おやすみなさい」
ミクは眠りについた
僕の頭にはあの少女の歌声が残っている
あの少女は一体
あの歌は一体
わからないことだらけだ
だけど考えれば考えるほど眠くなってくる
リンのこともあるからもう寝よう

翌朝
「ふぁ〜、おはよう、レン君」
「う…うーん…」
やっぱりミクは早起きだ
「レン君着替えて、リンちゃん迎えに行くよ」
「うん…そうだね」
寝ぼけながら支度する
「もう治っているかな?」
「医務室なら大丈夫と思う」
「うーん、まぁすぐ治るって言ってたもんねー」
僕達は着替え終えて部屋を出た
朝食前だがもう何人か部屋から出ていた
知り合いと話していたり、体操したり早めに食堂で席を取ろうとしている人がいた
「こんな時間にもうこんなに人がいるんだね」
「みんな早いよね〜」
「とにかく医務室へ行こうよ」
僕達はエレベーターで医務室のあるフロアへ移動した
医務室の前に中崎のおじさんがいた
「おじさん!」
「ん?おぉ!お前たちか!」
「どうしたの?」
「どうしたもないだろ?リンちゃんが運ばれたって聞いてな、見舞いに来たわけだ」
「それにしても早い時間だね」
「昨日は夜勤もあったのさ」
「おじさん、いつ休んでいるの?」
「ん?まぁ暇な時かな!」
中崎のおじさんはそう言って笑う
「ちゃんと休んでよー」
「なぁに!いざとなれば医務室があるだろ!」
「無理しないでよ」
「お前たちが支えてくれるだろ?」
そう言ってまたおじさんは笑う
「あっおじさん、リンは?」
「あぁリンちゃんは大丈夫だ。もう良くなってるよ」
「良かったー」
僕達はホッと胸を撫で下ろす
「さぁ早く行ってやりな、リンちゃんはお前たちを待ってたぞ」
「うん!」
「おっと!もうこんな時間だ!じゃあまた仕事してくるわ!」
「おじさん頑張って!」
「無理しないでねー!」
おじさんは「そうするよ」っと言って笑いながらエレベーターに乗り込んでいった
「じゃあミク姉、入ろうか」
「そうだねー」
「リンが元気になって良かったよ」
「会ったらハグしないとね!」
「それはいらないんじゃないかな?」
僕達は笑いながら医務室へ入った

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