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ボカロ図書館
モノクロタブレット 第1話
僕達は記憶を信じてる
それが偽りだったとしても



2842年 東京
新宿区のある高層ビルのワンフロア
僕達はいた
僕達は小さい頃からこのビルで過ごしてた
僕と姉だ
今僕達は白衣の人たちになぜか囲まれている
理由はわからないが喜んでいるのは確かだ
その中で知ってる人が僕の黄色い髪をくしゃくしゃして話しかけてきた
「レン君、久しぶりだね」
「あぁ中崎のおじさん」
この人は僕達を小さい頃から見てくれていた
僕の横にいる姉のリンは不思議そうな顔で辺りを見ている
僕も辺りを見ていると少し太った白髪のおじさんがやってくる
この人はここの偉い人
それくらいしか覚えてない
「やぁレン君、リンちゃん。君たちには来るべき時の用意をしてあるよ」
来るべき時 中崎のおじさんからよく聞かされた
この世界にいるもう1人の自分のこと
そのせいで僕達は居場所を失ったことを
そして、時が満ちたことで彼等と戦う時がきた
彼等から僕達の居場所を取り戻す
そうしたら僕達は当たり前の生活が出来るらしい
ただ内容はあやふやだけど
「レン君、リンちゃん、私は大友と言うんだよ」
偉い人は僕達に名乗った
「君たちを今から来るべき時のための部屋へ案内するよ」
大友は僕とキョロキョロしてるリンをある部屋へ連れてきた
そこには広大な面積の部屋があった
部屋の奥には人の形をした的があった
射撃場らしい
そこで銃の練習をする少女がいた
緑のツインテールの少女
彼女はこちらに気づき駆け寄ってきた
「レン君!リンちゃん!久しぶり!」
「久しぶりミク姉」
彼女はミク
僕達の友達だ
相変わらずリンはキョロキョロしている
僕達の会話を遮るように大友が入ってきて僕達に銃を手渡した
「これを使って練習しておいで」
僕達は銃を受け取り練習を始める
ミクに打ち方のコツを聞いて撃ってみる
体中に衝撃が走る
いきなりの音にリンは目を丸くしている
大友は僕達にドーナツを残して部屋を出て行った
僕達はミクに銃の構え方を教えてもらい練習した
練習すればするほど的に命中するようになってくる
互いに急所に当てた時はリンとハイタッチした
命中すれば来るべき時に活躍するし
ミクが褒めてくれた
リンはミクに頭を撫でてもらえるのがよっぽど嬉しいのか急所に命中する度にミクの所へ駆けだしていく
「リンちゃん上手だね!よしよし!」
「リンは僕よりすごい」
「レン君も上手だよ!よしよししてあげる!」
「べっ別にいいよ!」
「恥ずかしがらなくていいのに〜」
ちょっと頬が熱くなる感じがした
練習すればするほど命中するしリロードも早くなる
練習していると中崎のおじさんが入ってきた
「よぉ!どうだ?練習?」
「バッチリ!」
リンも親指を立ててアピールする
「そうか!それは良かった!じゃあまた帰るときに呼びに来るな!」
中崎のおじさんは部屋を出て行った
僕達はまた練習した

おじさんが部屋を出てから1時間くらいしてまた中崎のおじさんが入ってきた
「よぉし!帰るか!」
その声を聞いて3人揃って中崎のおじさんの前に集まる
僕達は中崎のおじさんに連れられて一個上のフロアへ行く
ここが僕達の居住区域だ
僕達はミクと一緒の部屋だ
中崎のおじさんはカレーを置いて「また明日」っと言ってフロアを後にした
「ねぇねぇ!カレーとネギって合うよね!」
ミクはいつも何かにネギを混ぜたがる
「どうかはわからないけど…」
「レン君やリンちゃんにもかけてあげる!」
「うわっ!」
声を上げたときにはもうカレーにネギがかかっていた
「ミク姉ー…」
リンは不思議そうな顔でネギの入ったカレーを混ぜだした
「リン、無理するなよ?」
リンはネギまみれのカレーをスプーンですくい口へ運ぶ
「リンちゃんどう?」
身を乗り出してミクは感想を聞く
リンは何も言わず親指を立ててアピールする
「やっぱりリンちゃんはわかってくれる!」
「おいしいか?」
僕は半信半疑のままカレーを口へ運び
戻した
こいつは万人向けの料理じゃないって確信した
「もったいなーい」
「カレーにネギを乗せる時点でおかしいよ!」
「ラーメンにヒマラヤくらいネギかける人だっていたんだよ!」
「それは昔の小説だよ!」
ふと思った
僕達の存在について
そして、来るべき時の自分と似た存在について
ミクから話を聞いてみた
「私達の存在?」
「彼等にも僕達のような何らかの存在があると思うんだ」
「そうかな〜?来るべき時は中崎のおじさんが言うには自分にすごく似てる人ってことだけど」
「どうして彼等と僕達は共存出来ないの?」
「それはわからないよー。あっ明日ルカさんから色々教えてもらえるかもしれないよ!」
「ルカさんは物知りだよね」
リンもゆっくり頷く
「じゃあ今日はもう寝よう!」一部屋六畳ほどだが3人で寝ても全く狭くない広さだ
だが、ミクのネギの抱き枕が1人分スペースを奪っている
基本はミクは勝手に寝て
僕とリンは向かい合って眠る
明日ルカさんに来るべき時について教えてもらう
僕達は眠りについた

朝 起床のチャイムが流れる
守る必要もないんだけど朝すぐご飯食べたいから守ってる
「うーん!おはよー!」
ミクは僕に抱きつく
「うわっ!」
「ちゃんと眠れたかな〜?」
リンは右手の人差し指をくわえてミクを見ている
「リンちゃんもおいで!ハグしてあげる!」
リンは僕達の方へやってきてミクからハグをもらう
だいたい僕は間で挟まれる役だ
部屋を出て食堂に向かう
他の人達も移動している
食堂はここから4フロア下になる
エレベーターは一度に百人乗れる広さだ
しかしすぐいっぱいになる
食堂に着くと和風の香りが漂う
朝は和食なのだ
と言ってもご飯に味噌汁に漬け物だ
肉や魚等は彼等から居場所を取り戻して回収しなければならない
ミクはいつものように味噌汁にネギを入れる
もはや汁が見えない
「いただきます」
手を合わせて言う
リンも手を合わせた
ご飯を口に運び
次に味噌汁を口に運ぶ
食堂では色々な話が聞こえた
だいたいは見なくなった人の安否だ
「そういえば智恵ちゃん見なくなったね?」
「智恵ちゃんの来るべき時が来たのかもな」
「早く普通の生活をしてみたい」
ほぼ毎日そんな話が聞こえる
「来るべき時ってどんな風になるんだろうね?」
僕はミクに尋ねた
「来るべき時…うーん…」
「ルカさんに聞けばわかるかな?」
「そういえばルカさんに聞くんだったね?」
「ルカさんどの時間がいいかな?」
「うーん…お昼?」
そんな話をしてたら中崎のおじさんが来た
「よう!ちゃんと食えてるか?」
「おはよー!ちゃんと食べてるよ!」
「僕も食べてるよ」
リンは空になったお椀を中崎のおじさんに見せつける
「そうかそうか!じゃあ食後の散歩に行くか!」
「行きたい!」
ミクは中崎のおじさんに訴える
リンも行きたそうだ
「よし!じゃあ行くか!」
僕達は上のフロアへ移動する
ビルの中でも結構上層階だ
エレベーターが開くと自然豊かな公園が広がる
「リンちゃん!レン君!ブランコ乗ろうよ!」
ミクはブランコへ駆け出す
リンもミクの後を追いかける
「待ってよ!」
僕も後を追いかける
中崎のおじさんは大笑いしてる
「お前たちは仲が良いな!」
「昔からの友達だもん!」
「あぁ、そうだったな!」
ブランコをすると奥の木の下で読書しているルカさんを見つけた
「ミク、あそこにルカさんがいるよ!」
指を指してミクに伝える
「あっ本当だ!お昼時間開いてるか聞こうよ!」
僕達はルカさんのもとへ行く
「2人は神の世界では禁断とされた果実を蛇の神にそそのかされ、その果実を口にした。そのことを知った神は2人に激怒し、天界から地上へと落とした。落とされた2人は老いて朽ちる体になってしまった」
「ルカさん何読んでるの?」
「えっ?あぁあなた達ね。これはキリスト教の神話よ」
ルカさんは難しい本ばかり読んでる
僕達にはチンプンカンプンだ
とりあえずお昼時間開いてるか聞かないと
「ルカさん、聞きたいことあるんだけど…お昼は時間開いてる?」
「聞きたいこと?」
「うん」
「お昼なら時間開いてるわ。どこで集まるの?」
「リンちゃん、レン君、どこがいい?」
「うーん…どこでもいいけど…。部屋なら楽かな?」
リンは頭を傾けている
場所について考えているようだ
「あなた達の部屋にお邪魔しようかしら」
「えっ?いいの?」
「綺麗に整理してるならね」
「整理するよ!」
「ふふっ、楽しみにしてるわ」
ルカさんはそう言うとまた難しそうな本を読み始めた
僕達は今度は滑り台へ移動する
「ミクが先〜!」
「あっミク姉ー」
ミクは先に滑る
僕も続けて行こうと思ったらリンが僕の袖を掴んでいた
「リン先行きたい?」
リンは頷く
僕はリンを先に行かせて後から滑った
遊んでいる僕達のもとに中崎のおじさんが来た
「ちょっと偉いさんに呼ばれちまってな。また夕御飯の時に呼びに来るな!」
「おじさん大変だね」
「なぁに、こんな事で疲れるおじさんじゃないさ!」
中崎のおじさんはそう言って大笑いすると「じゃあな!」と言ってエレベーターへ向かって行った
僕達はお昼ご飯の時間になったのでご飯を食べにいく
エレベーターに乗ると偉い人がいた
「大友さん」
「ん?あぁ君たちか」
「忙しそうですね」
僕は尋ねる
「まぁ忙しいことには変わりないが、優秀なスタッフ達のおかげで仕事がはかどるよ」
「中崎のおじさんは頑張ってる?」
「中崎君なら頑張ってくれているよ」
そう聞くとなんだか嬉しい
気付けば食堂のフロアに着いた
僕達は大友さんに挨拶して食堂へ行った
「今日は何かな?」
「ミク姉はまたネギ入れるんでしょ?」
「まぁね〜」
リンのお腹が鳴る
リンはうつむいて恥ずかしそうにしてる
「お腹空いたね、早く食べようよ」
今日はマカロニサラダだ
数少ない家畜であるニワトリの卵から取れた新鮮なマヨネーズの香りが漂う
野菜はブロッコリーや人参、キュウリだ
ミクはもちろん
「ネギだよね〜」
服の内ポケットに忍ばせていたネギパックを取り出しマカロニサラダにふんだんにかける
ミクは部屋でネギを栽培しているのでネギが尽きない
「やっぱりネギだよね〜」
マカロニサラダなのにミクの口元からはシャキシャキというみずみずしい音が響く
リンももぐもぐ食べている
マヨネーズのほのかな酸味がアクセントになり、どんどん口に運んでいける
「リン美味しいか?」
リンは深く頷く
かなり美味しいらしい
本当に美味しい
僕達はお昼ご飯を食べ終えて部屋へ戻った
「私のジョージ!」
ミクがジョージと呼んでいるのはネギのことだ
何かとネギに名前を付けている
「ミク姉、整理しようよ」
「えっ?あぁそうだね」
ミクはネギに水をやり、整理を始めた
主に脱ぎっぱなしの服とか
よく見たら全部ミクのだ
「ミク姉整理はちゃんとしようね」
「わかってはいるんだけどねー」
「絶対わかってないでしょ」
リンは黙々と整理していく
「リンちゃんは偉いね〜」
「ミク姉がだらしないんだよ」
ミクは僕の言葉にムスッとしながらリンを抱きしめている
リンはミクの手を持つ
「リンちゃんはよしよししてほしいんだよね〜」
そう言うとミクはリンの頭を撫でだす
リンはミクにもたれて甘えだす
「整理しようよ〜。ルカさん来るよ」
「それもそうだけどリンちゃんが甘えてきてるから〜」
リンはまるで猫のようにミクに甘える
甘えるリンはまさに可愛いの一言に尽きる
しかし、整理しなければいけない
ルカさんもそろそろ来るだろう
ミクも渋々整理を始めた
整理が終わるくらいにルカさんがやってきた
「ルカよ、開けて大丈夫かしら?」
「どうぞ」
ドアを開けてルカさんが入ってくる
「あら、整理したのね」
「私が本気出せばこのくらい!」ミクは胸を張ってアピールする
「僕やリンが頑張ったんでしょ」
「うぅ〜」
痛いところを突く
「それで私に話って?」
「実はルカさんに聞きたいことがあるんだけど、来るべき時について知りたいんだ」
ルカさんは一瞬困ったような表情を浮かべた
「来るべき時の何を知りたいの?」
「ルカさんが知ってること知りたい」
ルカさんは大きく息を吐いて答えた
「来るべき時って言うのは、私達が居場所を取り戻すためにもう一人の自分と戦うことよ」
「うんうん」
ここは中崎のおじさんに聞かされた通りだ
「そして、戦う相手を倒して彼等になりすますの」
「えっ?」
これが普通の生活なのかと思うと唖然とした
「彼等になりすまして暮らすってどうなるの?」
ルカさんはうつむいて首を横に振る
ルカさんでもわからないことがあるのだと感じた
僕は別の質問をする
「もう一人の自分ってどんなの?」
「姿はほぼそっくりね。性格も似ているわ」
「それなら簡単に倒せると思うけど」
「ここからが重要よ」
僕達は息を呑む
「彼等は人間じゃない」
その一言にみんな固まった
もう一人の自分なのに相手は人間じゃないなんて
「どんな姿なの?」
「本来は…ごめんなさい、わからないの」
これもルカさんでもわからなかった
自分達の目で見るしかないらしい
「あっルカさん、銃は使えてる?」
ミクはルカさんに尋ねる
「銃なら使えるわよ」
「ルカさんのGSRはどれくらいだっけ?」
GSRとは銃の扱いに長けた者が週に一度銃でスコアを試すランキングのことだ
今100人くらいランキングに登録されている
「私は53位よ」
「すごいなー」
リンはうんうんと頷いている
「僕達に銃の上手な扱い方教えてもらえませんか?」
「それくらい大丈夫よ」
「やったぁ!」
ミクは大喜びしている
リンも両手を上げて喜ぶ
「今から射撃場行ってみる?」
「ルカさん教えて!」
ルカさんは少し微笑む
僕達はエレベーターに乗り込み射撃場へ向かう
射撃場には既に4人くらいいた
僕達が入ると一斉に視線がルカさんに向く
「ルカさん有名人だね」
「GSRに載るだけでこうなるのよね」
ルカさんは少し面倒そうに話す
「私の銃の打ち方をいちいち見てくるのよ」
「ずっと見てくるね」
周りの人を見ると、射撃練習よりルカさんに視線を向けている
「君達、銃の練習かい?」
射撃場にいる人が話しかけてくる
「そうだけど」
「君達の腕前じゃ来るべき時なんて無駄無駄」
「なによ」
ミクは喧嘩腰になる
「こんな子供より俺達に教えてくれないか?」
「嫌よ」
ルカさんは即座に拒否した
「じゃあこうしよう。俺達とこの子供で射撃のスコアを競う。勝った方が射撃を教えてもらう」
「上等じゃない!」
「ミク姉大丈夫?」
「私の腕を舐めないで」
「銃は5発の合計を競う。それでいいか?」
「文句なし!」
「格の違いを教えてやるよ」
「ミクちゃん、私が代わるわ」
「おっと、俺達はこの子供と戦うんだぜ?」
「ルカさん、私なら大丈夫だから」
ミク達は銃を構える
的が流れてきて2人は銃を発砲する
たった数秒の戦い
結果は明らかなものだった
止まった的ばかり練習していたミクにとって動く的は素人同然だった
ミクはほとんど的にすら当たっていない
「そんな…」
「言っただろ?格の違いを教えてやるよって」
ミクの手は震えていた
「お前たちには能力が無いって事だ。基礎から頑張るんだな」
「大人げないわね」
ルカさんが口を挟む
「はぁ?」
「子供に勝てて嬉しい?」
「あんたから銃の扱い学べるなら子供だろうと必死さ」
「情けないわね」
「こっちは来るべき時のために頑張っているんだよ」
「自分達が生き残れるなら他人はどうなってもいいの?」
「当然だろ?自分が生き残るためなんだぞ?」
「自分勝手な人には教えれない」
「いい加減にしろよ。あんたも自分を守るために銃を練習したんだろ?」
その言葉にルカさんはついに切れたらしい
一瞬で相手の頭に銃を突きつけた
「おいおい、ここで殺し合いなんかしたくねぇよ」
他の数人はルカさんに銃を向けている
「ちょっといいかな?」
そう声をかけたのは大友さんだった
「君はこのグループのリーダーの翔太君だね」
「そうだけど」
「君の来るべき時が、いや、君達の来るべき時が来た」
「!」
「装備を用意してある。下層部の準備フロアに集まってくれ」
「こんな時に来るべき時かよ…」
翔太と呼ばれた男達は部屋を出て行った
「さぁゆっくり練習してくれ」
「大友さんはどうして来たのですか?」
僕は質問した
「彼等の来るべき時が来たからだよ」
僕が聞きたいのはそうじゃない
どうして偉い人であるはずの大友さんがわざわざ伝えに来たのかと言うこと
暇な人がいるかはわからないけど他の人でも出来たはず
大友さんは「頑張りたまえ」と言い残して部屋を出て行った
「なんで大友さんが来たのかな。ルカさんは大友さんが呼びに来たの見たことある?」
「私も無いわ」
「変だよね」
僕の記憶の中には大友さんが忙しかった記憶しかない
そのせいか大友さんの記憶はあまりない
僕達はルカさんに教えてもらいながら銃の練習をした

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