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ボカロ図書館
短編鏡音リン・レン1 ココロ キセキ
20XX年
戦争により荒廃した世界
ひっそりと山の中に佇む研究所に一人の博士がいた
「もうすぐ、もう少しなんだ」
ものすごい数のモニターやボタンを操作しあるものを作っていた
「これでついに…学習型アンドロイドの完成だ…!」
博士がボタンを押すとカプセル型の保存機が開いた
中にはアンドロイドがいる
アンドロイドは静かに目を開いた
博士はすぐさま作った服を着せてあげた
「アナタワ?」
アンドロイドは片言の言葉で話しかける
「僕はレン、君を作った博士だよ!」
博士は笑顔で言った
「博士?」
アンドロイドは無表情で言う
「そうだよ。君はリン、君の名前さ」
「リン…。ワタシノ名前」
「うん、プログラムに問題は無さそうだな」
リンは自己学習プログラムが組み込まれており、自身でプログラムを覚えることが出来る
その成果は見事なものだった
リンは日に日に様々な事を覚えていく
炊事、洗濯、家事
出来なかったの次が出来るだ
「こう見ると僕には出来ないことばかりだな、ははっ」
「博士、何ヲ作ッテイルノデスカ?」
リンは博士が笑った理由などわからず博士の話を無視して聞いた
「ココロを作っているんだよ」
「ココロ?」
「そうココロ」
「気持チトカ、感情」
「そうだけど、ココロは辞書で決めれないことがいっぱいある。君に教えてあげたい。人の喜び、悲しみを」
博士は涙を流す
「アナタワナゼ、泣クノ?」
「えっ?あぁごめん。喜びとかどう教えたらいいかと思ってさ」
「喜ビ、感情ノ1ツ」
「それとは違うんだ。嬉しい気持ち、悲しむ気持ち。君に感じてほしい」
「…?ワタシノ理解ヲ超エテイル…」
「今はいいんだ。いつかわかるよ」
博士はリンが運んできたコーヒーを受け取り作業に取りかかる
「…博士、タマニワ外ニ出テクダサイ。体壊シマス」
博士は「ふぅ」っとため息をついて「行こうか」と言った
研究所を出てしばらくすると見晴らしのいい丘に着いた
「あそこは、元々みんな楽しく暮らしていたんだ」
博士は破壊された街を悲しそうな目で指差す
「…戦争?」
リンはこの光景に合いそうなワードを持ち出す
「そう…みんな死んでしまった」
博士の目から涙が零れる
「僕はこの世界で残したい。人が持っていた心を」
博士はまた「ふぅ」っとため息をついた
「…じゃあ帰ろうか」
博士はリンに手を差し出す
リンはどんな意味で手を出されたのか理解出来なかった
「あははっ…、行こうか」
博士は苦笑いしてリンと研究所に帰っていった

ー数ヶ月後ー
「きっともうすぐだ!心は…ッ!」
博士は血を吐き出す
「博士、大丈夫デスカ?」
「まだ…倒れるわけには…」
「無理ワイケマセン」
「もう少しなんだ…、頼む」
博士は作業を続けた
「…ソロソロ充電ナノデ戻リマス」
リンは充電のため戻っていった
「…くそっ!」
博士は机に手を叩きつける
「やはり無理なのか…」
思えばアンドロイドが完成したこと自体が奇跡だ
今までの奇跡を思い返す
「1度目の奇跡は君が生まれたこと…、2度目の奇跡は君と過ごせた時間…、3度目はまだない…3度目はまだ…」
その時メインコンピューターが反応した
「メッセージを受信しました」
「メッセージだって?!一体誰から…」
「発信元は…」
「…!」
博士は発信元を見て驚いた
「…必ず、必ず心を完成させてみせる」
メッセージを見て博士は心の製作に取りかかる

「3度目の奇跡は…未来の君からの"マゴコロ"。未来の天使からの心からの歌声」
博士の想いがコンピューターに蓄積されていく
「4度目はいらない…4度目はいらないよ」
博士は涙を流しながらキーボードを叩く
博士の"ココロ"は複雑だ

ー1年後ー
「博士、今日モ作業シテキマス」
リンは墓石に語りかける
ある日、研究室で椅子から落ちて倒れている博士を発見した
リンがバイタルサインを確認したがすでに亡くなっていた
コンピューターのモニターには「ありがとうリン、この世に生まれてきてくれて」と書いてある
リンにはなぜそれが書いてあったのかはわからなかった

研究所はすっかり生活感がなくなった
リンはコーヒーを注ぎ"博士"のもとへ運ぶ
「博士、ユックリシテクダサイ」
リンはずっと変わらない行動をする
それはこれからも変わらないだろう
いつもよりすることが減ったので研究所や自分のメンテナンスをする
時間がある時はこのように"博士"のいる丘へ行く
十字が飾られた背景には破壊された街が広がっている
リンは"博士"の指示を待っているのだもちろん、彼女自身"博士"が何も言えないのは理解している
だが、彼女には心がない
したいという感情がないのだ
「…コーヒー戻シテキマス」
何時間かじっとした後に言ったことだった

幾百の年が過ぎた
一人で残された奇跡のロボットに異変が起きた
リンは願っていた
「知リタイ、アノ人ガ命ノ終ワリマデ、私ニ作ッテタ"ココロ"」
幾百の時も同じことをしてたリンはよく分からない思考に襲われていた
「博士…博士…博士…」
リンは博士のパソコンを触りフォルダを探る
フォルダの一つに"リンへ"とかかれたものがあった
そのフォルダは圧縮されており解凍する必要があった
リンはそのフォルダをインストールし解凍した
その瞬間奇跡が加速する
何故かリンの目から涙が溢れる
「ナゼ私…震エル?」
リンの中で鼓動が加速する
「コレガ…私ノ望ンダ"ココロ"?」
リンはココロが制御出来ない
「フシギココロココロフシギ、私は知った、喜ぶことを、フシギココロココロフシギ、私は知った、悲しむことを」
リンは研究所をまわり博士の記録を辿る
辿る度に様々な"ココロ"が溢れる
「フシギココロココロムゲン、なんて深く切ない…」
リンは気付き始めた
何故自分が生まれたのか
博士はずっと孤独だった
ずっと寂しかった
誰かにいてもらいたかった
"ココロ"を手に入れた奇跡のロボットは理解した
あの日、あの時、全ての記憶に宿る"ココロ"が溢れ出す
「今だから言える…!本当の私の言葉…!博士…捧げる…あなたに…!」
リンは精一杯博士への思いを歌う
「アリガトウ…この世に私を生んでくれて」
博士がリンを作った時の記憶が流れる
あの時の博士は嬉しかったに違いない
大切な存在ができて
「アリガトウ…一緒に過ごせた日々を」
何気ない日常
博士にコーヒーを運ぶ、新しいことを教えてもらうこと
博士と一緒にいた
それだけで気持ちが溢れ出す
「アリガトウ…あなたが私にくれた全て」
生まれてから今まで
博士はずっとリンに様々なものを与えた
そのほとんどは形のない"ココロ"で感じ取れるもの
人の喜びや悲しみも
今のリンならわかる
何故博士が手を差し伸べたのかも
「アリガトウ…永遠に歌う」
この歌声が博士に届くように…!
「Lalala…Rulala…」
それはまさに奇跡でした
"ココロ"を手に入れたロボットは歌い続けました
思いの全てを
しかし、その奇跡もつかの間
"ココロ"は彼女にはあまりにも大きすぎました
その大きさに耐えられず、機械はショートし二度と動くことはありませんでした
しかし、その表情は笑顔に満ち溢れ、まるで天使のようでした




第一部 ココロ・キセキ
第二部 ココロ
DIVA2nd













「リン、コーヒー入れてくれないか?」
「博士」
「ん?」
「アリガトウ」
博士はちょっぴり顔が赤くなる
「リン、君の声は届いていたよ」
博士は優しくリンの頬に手を伸ばす
「暖かい…」
「そうだリン」
「?」
「これからもずっと一緒にいてくれないか?」
「ずっとずっと一緒にいれますよ」
リンは笑顔で答えた
博士も自然と笑顔になる
「4度目はいらないって言ったのに叶っちゃったな。あははっ」
「それだけ博士の思いが強いってことですよ」
「そうだね、何百年もかかったんだから」
「この世界だからってコーヒーばかり飲まないで健康に良い生活をしてください」
「あははっ君には怒られてばかりだね」
博士はリンに手を差し伸べる
「じゃあ帰ろうか」
「はい」
リンは博士の手に自分の手を置いた
2人は手を繋ぎ帰っていった

fin

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