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僕らの場合
6‐1


俺と哲が別れて七日。

ついでにネコと哲が浮気してからも七日とちょっとたった。

哲がネコに飽きて捨てるのも、たぶんそろそろだ。ネコは今どこにいるんだろうか。

ネコは家につくって言うぐらいだから、あの部屋に今もいるのかな。

そう思って哲のバイト始まる五時ぐらいに久々に家に戻ると、ネコが一人で俺を出迎えた。

正直駄目もとで来てみたから言葉にできないぐらい嬉しい。

そして現在、俺、絡まれ中。


「アンタさあ、いい加減気づきなよ。てっ君はお遊びでアンタと付き合ってたんだよ?」


一応は俺と哲の家だったはずの場所に、ネコが一人ぼっちで残されてるのはちょっと不思議な光景だった。

同時に哲にしては随分もった方だとも思う。

七日も続いただなんて長い方だと感心する。

でも、ネコの様子から考えるにそろそろ二人の仲もお終いなのだろう。

ネコは見るからに捨てられる不安に飲まれかけていた。


「てっ君、飽きたしウザイって言ってたから」


必要以上に攻撃的になったネコは一人べらべら話し続ける。

前に聞いた喘ぎや、高飛車で厭味で、甘い声とは違う焦った声だった。あまり聞いてて楽しくない。

俺はネコはひとまず置いておいて、久しぶりに戻ってきた我が家を見てみた。

一応俺の借りてる部屋だ。それなのにちっとも帰ってきた気分がしないのが不思議だ。

俺も哲も物を置くタイプではないので生活感があまりない。

そこに、俺や哲の物じゃない服――たぶんネコの――だけが置いてあったりすると何だか笑ってしまって、いまだ一人口を動かし続けるネコを俺は見た。


「早くてっ君の前から消えてくれない?」


つうか何でもかんでも語尾を上げたらカワイイとでも思ってんのかこのネコは。

可愛く鳴かないなら黙ってくれという気持ちで睨みつけてみると、こてりと首を傾げられた。


「何?黙ってないで何か言いなよ。アンタてっ君に捨てられた可哀相なヒトだからさ、泣き言ぐらい聞いてあげるけど?」


ちくしょう……カワイイぜ正式名称猫ばばクソ野郎。

……名前を教えてクダサイ。


「お前、名前なんての?」

「え〜!?知らないのお!?てっ君僕には何でも教えてくれたのに!!てっ君ったらいっつもアンタがウザイって話してたよお?」

「知るかよンなこと。いいから名前」


早くしろよ。

イラっときてにじりよるとネコはビクリと身を震わせた。

当たり前だ、哲まではいかないけど俺も結構タッパあるほうだから。

それが凄みながら近付いてきたら怖いもんはあるだろう。

ましてやネコにしてみれば俺は寝取った男の現恋人。

自分が殴られてもおかしくない状況だってことくらいは分かってるようだ。分かってて挑発するとか、ネコ、ますますカワイイじゃねえか。

でもまあ怯えさせるのは俺の趣味じゃないので一歩下がってみせる。



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