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僕らの場合



もともと俺はタチもネコもいけるくちだった。

今の恋人、哲に会ってからはずっとコネコちゃんニャンニャンしてたけど、自分から食いたいなと思う気持ちがなくなったわけじゃない。

ただ、周りに哲よりイイ男がいなかったから最近の俺は抱かれるだけで満足していた。

まあ一応恋人の哲がどういうやつかも説明しておこうと思う。

身長、高し。

顔、イケメン。

性格、浮気癖ありの俺様野郎。

要するにタチが悪い両刀バリタチ野郎だった。

今も俺たちの暮らす愛の巣的な場所で知らない野郎とセックスしてやがる。

俺との約束破っていいご身分だぜクソ野郎。
つうか通算何回目の浮気?もうしないって嘘も聞き飽きたぜ哲っちゃんよお。

とまあ俺は今怒っていた、いや、怒っているわけですが。

なんで、こんな瞬間に限ってムラムラしてしまうんだろう。

現在進行形で浮気中の哲にしがみつき、甘い声を出してる猫ばばクソ野郎は、どうしてか俺の好みドンぴしゃだった。


「あっ、んン!!てっ君、ああっ!!イっ、ヤァぁ――!」


つか嫌とか言ってるけど強姦じゃないよね?
騎乗位だからまさかとは思うが、少し不安になって首を伸ばすとタイミング悪くぎしりとフローリングが鳴る。

肝が縮んだが互いに夢中の二人は気付かなかった。
安心して俺は二人、いや哲に跨るクソ野郎を見る。
横顔に髪がちらちらとかかって鬱陶しそうだ。耳にかけてやればいいのに、哲は「もっと腰動かせよ」とか言うだけだった。


「ぁっ、んん!!こ、……こう?」

「そんなんじゃ満足できないだろテメェは」

「ハッ、あァ、てっ君の、いじ、わる」

「そう思うならヒクつかせんなよ。この淫乱」


首を横に振りクソ野郎は無理、助けてと哲に縋る。哲は僅かに鬱陶しそうに表情を歪めるとクソ野郎の腰を両手で掴んで、無理やり動かし始めた。

快感でおかしくなりそうなのか、クソ野郎は哲の首にしがみつき悲鳴じみた嬌声を上げる。

艶めかしい媚びた声が腰にきて、俺の半身が身をもたげようとし始めた。

止めろ馬鹿。そう呟いて一歩後ずさると、再び床が鳴り響きクソ野郎がこちらに目を向ける。

甘い声に似つかない意地悪く細められた双眸。色素が薄いためか、頬がチークをのせたみたいに紅潮している。

あ、目が合う。

そう思った瞬間、クソ野郎の唇の両端が持ち上がり、スローモーションで動いた。

おまえは、ようなし。

多分、そんなことを言ったのだろう。
唖然とした俺はだらしなく口を開けたまま動けなくなる。
啼くことを止めたクソ野郎を不審に思ったのか、哲は動くのを止める。そしてクソ野郎の視線の先に立つ俺に気付き、吐き捨てるように言った。


「見てんじゃねえよ。出てけ」


くっそ、元は誰の家だと思ってんだ。そう言えなかった。

怒るどころか二人のセックスを盗み見ていた自分が急に浅ましく思えてきて。

襲ってくる羞恥に耐えながら俺はその場を後にした。









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