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変化


「…あなた……いつまで居座るつもりなの」


リング争奪戦とやらが終わり、僕はいつもの様に応接室で風紀の仕事を進めていた。
ただ目障りなのは、そこにディーノが居るということ。帰れと言っても何か口実を付けて出て行かない彼を、僕はズタズタに咬み殺したくて仕方がなかった。
確かにリング何とか戦が終わってからもディーノとはよく暇潰し程度で殺り合いをしていたが、委員会の方が忙しくなってきてから僕は一週間以上応接室に籠もっている。
それなのに彼は応接室に毎日やって来るものだから、もう並中に来る必要なんてなくなった筈だと思ったのと同時に僕はそれを何度もディーノに伝えるのだけれどディーノはヘラヘラと間抜けな笑みを見せるだけでそれに我慢出来なくなった僕はデスクをドンッと強く叩きながら立ち上がり、彼に怒声を放った。


「いい加減にしてよ!あなた何しに来てるの!?僕はあなたの相手してる暇なんてないんだ」

「ま…まぁ落ち着こうぜ恭弥」

「出て行って」

「え…とあの、な……そうだ。お、俺も何か手伝おうか?息抜きにまた戦ってやっても、い、いいし!」

「必要ない」

「なっ…何でだよ!おまえ、咬み殺すの好きだろ!?」

「黙れ。僕はあなたとも、誰とも群れるつもりはない。これ以上僕に関わろうと言うのならあなたの望み通り咬み殺してあげるよ」


そう言いながら懐からトンファーを出せば、ディーノは胸の前に掌を出し「ま、待てよ恭弥。それなら屋上へ行こうぜそっちの方が暴れやすいだろ?」と何か焦りを感じる口調で言い僕は「ふぅん。余程咬み殺されたい様だね」と言い、屋上へ向かった。
辿り着くと直ぐ様僕はディーノに紫電の煌めくトンファーを振るう。いつもならそれを簡単に避けるディーノが、避ける事をしなかった為ガキィッという音と共に彼は後ろに吹っ飛び不思議に思ったがいつもと違う事はただ彼の部下が居ないという事だけだった。
「…痛っつ……おまえ何もそんないきなり…」という頭部を抑え彼の前に立つ僕を片目で見上げるディーノの言葉も聞かずに、僕は二発目を与えてやる。
が、彼は其処に居なかった。

(消えた……いや、逃げた…?)

そう思った刹那、背後に気配を感じ僕はばっと後ろを振り返ろうとするがそれは叶わず、感じたのは暖かい温もりと、彼の吐息だった。
僕を抱き締めるディーノの力が余りに強く、拘束された様に動けない僕は彼の力の強さを身にもって感じ、それが酷く悔しかった。


「何のつもり!?離してよっ」

「…好きだ、恭弥……おまえが好きだ…」

「なっ、何言ってるの!?冗談は顔だけにしなよねっ」

耳元で囁く彼の言葉が、吐息が、鼓膜を震わせ脳をも震わせる様に伝わって来て僕の身体中を蝕む様な、そんな感覚に陥る。初めて言われた其の言葉に、僕の心臓は何故か鼓動が激しくなり顔が熱くなるのを感じた。
彼がこの時、どんな表情で、どんな気持ちでこんな事を言ったのかはわからない。



ただ、この光景を鋭い眼差しでじっと、見つめている者が居たのに僕は気付いていなかった。




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