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跳ね馬とじゃじゃ馬


次の日から彼、ディーノは毎日のように僕の元へやって来た。
彼の言う"修行"とやらは僕からすれば関係なく、ただ強者と戦えるのと暇潰しで相手をしていた。
けれどその内、並中でもっと強い相手と戦えるという事がわかり、その日が近付く度に僕は胸の高鳴りを抑えられずに何度も、何度も紫電の煌めくトンファーをディーノに振るっていた。


「ねぇ、あなたよく飽きないよね」
「そういうおまえこそ」
「僕はただあなたを咬み殺すのが楽しいだけだ」


そう言った僕に、ディーノは「またおまえは…」と、半ば呆れた様な口調で大きな溜め息を着いた。僕はそれが少し頭に来て、溜め息と共に気を抜いた所を一気に距離を詰めて咬み殺そうと、した。
すると気を抜いていた筈のディーノは、直ぐに僕の行動に気付き愛用の鞭を使って僕の両手を、ひとまとめに縛り上へ引っ張り上げる。
ギリギリ…と云う様な、そんなキツく縛り上げられる音が聞こえれば、堅く握っていたトンファーも当然僕の手からまるで呆気なく、滑る様に落ちカランカラン…と云う屋上のコンクリートにぶつかる音が鼓膜を震わせ耳に響いた。


「何のつもり」

「今日こそ、ボンゴレリングの話を聞いてもらうぞ。おまえはいつも俺の話を聞かねぇんだから」

「離して」

「駄目だ。おまえこうでもしねぇと聞かねぇだろ」

「咬み殺すよ」

「やってみろよ。出来るのか?こんな状態で」


ディーノはそう言って、クスクスと笑みを零した。から、僕はそれが堪らなくムカついて(それ以前の行動からムカついているのだけれど、)キッと強く、鋭く彼を睨み付けながら思いっきり彼の腹部を蹴り上げれば彼は滑稽に後ろへ吹っ飛び、醜くて面白くて鞭が解かれた自分の手首をさすりながらコンクリートに尻をついているディーノを見下ろし唇の両端を上げた。
嗚呼、これだから草食動物を咬み殺すのは愉しくて可笑しくて鮮血が騒ぐものだから、やめられない。


「痛ててて……おまえなぁ…」

「何?何か文句でもあるの?」

「あるに決まってんだろ!」

「ふぅん。まぁ僕は今から校内の見回りに行くから、そこの亀にでも聞いて貰えば?文句」


彼の懐に居たエンツィオとか云う亀を指さしながらクスクスと嘲笑い、彼に背を向け地面に落ちていたトンファーを拾い、僕は屋上を後にした。
この刻の空は清々しく眩さ(まばゆさ)に目を細める程の蒼で、風が暖かく、まるで僕達を包み込むかのように優しく吹いていたんだ。


「このじゃじゃ馬を手懐けるにはやっぱり時間がかかりそうだな」

立ち上がったディーノは雲一つしかない空を見上げ一人手に、小さく呟いた。リング争奪戦の日は、もうすぐそこだった。






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