光の町まであと十五分


「今日は海行こか」
「二月なんですけど?」
「城戸、お前夏の夜の海がどないなってるか知らんの」
「はい」
「海水浴場の駐車場をおんなし車がぐーるぐーる」
「…」
「ナンパとナンパ待ちや」
「…」
「行け、千葉へ行け」


 カーナビをこの二年間ずっと一文字も忘れることのなかった住所にセットした。到着予定時刻は、午前、三時、五十一分、です。実際の交通規制に従って、走行してください。


「俺の会社にも冬の海がいいって言ってる人がいた」
「仲良くなれそうやね」
「冬で更に夜なんて、なんもないじゃん」
「明け方だーれもおらん海が見てたい、一人で座って、朝日が出る前に帰る」
「つかそれモンゴルの草原でもよくね?」
「そんな生の臭いが立ち込めてそうなとこはあかん」
「知らねえよ」


 しばらく、道なりです。


「城戸は彼女つくらんの」
「何で」
「つくらんの」
「いつもお前といてそんな暇ない」
「つくったらいい」
「…」
「いつでも消えたるわ」


 およそ、500メートル先、信号、を、左、方向、です。


「遠いなあ千葉」
「あとどれくらい?」
「知らん」
「お前が設定したんだろうが」
「知らんがな来たん初めてやし」

 間もなく、右、方向、です。この先、分岐が続きます。



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あきゅろす。
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