tete a tete


 貴之のアパートで寝泊まりするようになってもう五日になる。ユニットバスの扉の、薄い、ガラスだかなんだかわからないそれが割れているのにも、なんにもないこの部屋でただ寝転がって貴之が帰るのを待つのにも、慣れてきた。

 夕食だけは一緒に食べる。知らない人が食べたり時には残したり捨てたりする食事を一日中作って、帰ってきてまた作る食事。疲れないかと聞いたら、好きだから、って言うに決まってる。だから聞いてあげない。


「お店どこにあんの」
「天神」
「どこ天神て」
「博多からすぐだよ」
「今度行く」
「お子様は入れません」
「お子様ちゃう」
「明日キャナル連れてってやるから」
「何食べに行こかなあ」
「だめ」


 この人の得意料理を私は知らない。同年代の女の子の中ではダントツで料理上手な方に入る私より、貴之の作るものはおいしい。きっと得意じゃない料理も。


「なんでセックスせんの」
「はあ」
「へんな男」
「毛も生えてないような小娘が」
「生えとるわ」


 でも手は繋いで眠った。



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あきゅろす。
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