ガスパチョ


 まずトマトを湯剥きする。皮はない方がいい。湯剥きが面倒ならヘタのあたりに箸を刺して直火であぶる。氷水の中で丁寧に皮を剥いて、1センチほどの角切りにする。種は取りのぞいてもいいし、そのままでもいい。次にズッキーニ、なければキュウリを同じく角切りにする。ほかにセロリやパプリカなんかもあるといい。すべてをミキサーにかけ、ニンニクのすりおろしと、オリーブオイルと塩とレモン汁で味付けをする。
 冷蔵庫にずっと出番を待っていたオクラを見つけた。茹でてから輪切りにして、たくさん浮かべてみた。

 じりじりと夏の音がしている。窓を閉めていてもわかる。あの太陽に萎びていく自分を想像する。道端の草のように。

 今でも毎朝起きたらまず最初に東京と神奈川の天気予報を見る。今日はどちらも晴天です。傘も着替えも要らないみたい。

 「うそつけ、お前は何回おれをずぶ濡れにしたら気が済むんだ、ほんとはわざと外してんだろ」

だけど教える相手がいない。

 器に盛られたガスパチョの、星型のオクラが無駄にファンシー。

 「なんで入れんの?おれねばねばしたもん嫌いって言ったべ、この馬鹿」

 せいちゃんの声がいつもしている。ずっと聞こえている。

 エアコンの室外機から流れた水はどこまでのびていくことができるだろうか。焼けたアスファルトをゆっくりと下り、渇くことなく汐入の海の一部になれるだろうか。

 せいちゃん、今、東京では通り雨が降りました。



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あきゅろす。
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