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清水と泰楽


君が嫌い。

その事実は嘘のようで本当で、でも紙一重に正反対だと言うことを解り始めたのは中学生に上がってからだった。小学生の頃ではその感情が煩(わずら)わしくていっぱいいっぱいだった。


新学期を向かえて新しい校舎の屋上へさっそく向かう途中の階段で、おそらく同じ考えであろう人物の背を見つけた。入学式とかかなり面倒臭くて体調不良ですとか言って抜け出して学校探索。といったところだろう、前を歩く人物も。それに声をかけようかとも思ったが、なんとなくそういう気分にもなれなくて静かに一定の距離を保ちつつ同じ方へ歩いてく。


屋上の入口まで来るとジュンはなにも躊躇う事なくポケットからストラップを付けた鍵を取り出すとそれを回した。普通、入学式当日で生徒立入禁止の屋上の鍵を持っているなんて事はありえない。しかし泰楽ジュンとはそういう奴である。それが当たり前なもんだから深く突っ込むつもりもない。ただ、そんな事よりも。




「さっそくサボりかよ」




開けた屋上に入って行くジュンの背を追うように、ドアが閉まるのを足で止める。案外ドアが重くてがんっと打って少し足が痛いけど、そんなのは頭の隅に追いやる。さして驚く様子もなくこちらを見て「トシもね」なんて軽くはにかむ。ジュンの右手にはまだ先程使われた鍵が握られている。




「お前がストラップ付けるとか似合わないんだけど」

「あぁ、これね」




今度は俺の唐突な言葉に一瞬面を喰らったような顔をしたが、すぐに鍵に気づいたようで右手を俺の方へ見せる。鍵の端っこにゆらゆらと揺れる。ひよこだか毬藻だか解らない丸いマスコットが二つ。なんというか女子が持つのも可愛いげのない顔がついている。全く思い当たらないキャラクターと目があったような気がしてなんか嫌な気分だった。




「拓依の鞄についてたやつじゃないのそれ」






心惑わされるのは、



何も気付かない目前の彼は「くれたんだよ」と軽く笑った、それが俺の視力では嫌味にしか見えなかった。





title 確かに恋だった



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