清水と岩淵
君が嫌い。
そう心底思ったのは紛れも無く本当だし、それが何故かだなんて解り切った事だった。ずっと昔から一緒にいて、それが当たり前過ぎて気付かなかったけど、最近なんだか解ってきた。
なんか嫌だって漠然と嫌悪感を抱いたのは小学校の高学年に入ってからだった。俺ら五人はクラスが別々でもつるんだりしてて、でもクラスが違うからクラスで仲の良い奴ぐらい普通にいるわけで。あいつにも俺の知らない友達ってやつが出来てた。勿論俺にも出来てたからそりゃあ、あいつの明るい性格なら友達出来て当然だった。
「拓依、さっさと帰ろ」
「え…あー、ごめん、今日は先帰ってくんねぇかな」
基本的にあいつが友達を大事にしたりする事ぐらい知ってたし、あいつの事を理解してるつもりでさえいた。けど、たかが一緒に帰るのくらい断られた俺にはなんだか、優先順位をつけられたような気分になって腹が立ったんだ。そんな数ヶ月前かぐらいからの付き合いしかない奴に負けたような気がして、むかついた。あいつの肩を掴んだ所謂友達が「今日はサッカーしてくんだよなー」と幼く笑う声が俺の神経を逆撫でしていく。
「あっそ、じゃあもういい」
「え、」
まだ小さな胸に沸き立つ苛立ちに抗う術など到底しらない小学生丸出しの俺には、不機嫌に言い捨てるしか出来なかった。隠しもしない機嫌の悪さに勿論あいつも気付いたのだろう、それに驚いたような困ったような顔をして俺の名前を呼んだ気がしたけど、まだまだガキな俺はそれを無視して階段を駆け降りるしかなかった。
苛立つ原因はあいつだったから、当時の幼稚な頭では一方的にあいつが悪いと決め込んでいた。
君なしの日々は、
漠然とした苛立ちばかりで、思い出すのも億劫なくらい嫌いだ。
title 確かに恋だった
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