彼女の不幸
「んー…どうしたものか…」
取りあえずこの書類は届けなければならない。
でも先生は麻生たちと言っていた。
つまり最低でも二人の人間は資料室にいる事になる。
それもメンズファイブの誰かであるに違いない。
こんな事になるなら図書館なんて明日にすればよかった。
「あれ?なんでここの廊下は真っ暗……そういえば停電してたっけ?」
補助電力に切り替わったのだろう。明かりは一部の廊下と職員室などといった所しかついていない。
これだけの敷地面積のある学校の明かり全てを補助電力では補えきれないのだろう。
「って事は資料室も明かりはついてないんじゃ…?」
慌てて資料室へと向かいドアを開けようとするもロックがかかってしまっている。一応ロックの所に非常用のランプがついているので外からカードキーを通せば開ける事は出来るかもしれないけど…。
サァっと血の気が引く。
確か先生、カードキーは二人が持ってるって言ってたよね?じゃあ外から開かないんじゃないの?
窓なかったよね?換気扇あったけ?しかもここ防音だよね?
ってか暗闇で男女二人(しかもあの清水トシ)でどうにかなってたりしちゃ…った……り?
気まずい。助けようと助けまいとどっちにしようと気まずい!!
担任?それこそどうにかなってたらマズイ。
電気が戻って二人が自力で出て来るのを待つ?でも電気がいつ戻るかなんてわからない。
時計を確認すると停電から既に1時間ほど経ってしまっている。
とにかく一度落ち着こうと窓の外をみると反対の校舎に人影がある事に気付き助けを求めようと走り出した。
「小次郎が忘れるなんて珍しいね」
「まあトシがカードキーもう一つ持ってんだから問題ないだろう。」
「…面目ない」
「別に謝んなくてもいいよんっ♪」
(ら、ラッキー!!)
四人の後ろから隠れて話しを聞き思わずガッツポーズをする。
今の話しだとカードキーは彼等が持ってる。
って事は彼等に開けてもらえば救出も出来て気まずい思いもしなくていい。
何より私が会わずに済む!!
もう強引だけどこの際何でもいい!
大きく息を吸って一気に叫んだ。
「大変!!停電で一時間も資料室が真っ暗なままだ!!扉も外からしか開かないし!!」
人がいたらどうしよー!!と叫びながら逃げた。
だって声に気付いて誰かがこっちに走ってくる足音が聞こえたもんね!
「今の説明口調は何…?」
「そ、そんな事より資料室に入るのって…!」
「姫とトシだよんっっ!」
急げーと走り出す三人に声の主を追い掛けようとしていた小次郎も続いた。
「ぜっ、しま、った!!
しょ…ハァ、るいっ、持った!まま、だっ!」
下駄箱まで走り抜けたものの右手には数枚の書類を握ったままだった。
仕方なく一人で図書館で終わらせ担任に渡して帰った。
一応、口止めして。
(なんか、私…)
「麻生さんの足長おじさんみたいになってないか?」
何とも切ない気持ちになりながら家路へと着いた。
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