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キミの隣


別れなんて、こんなモノだって。
ずっと前から解ってたのに。


* キミの隣 *


「案外長い間…一緒にいるよな、俺たち」

「ああ」

「初めて逢ったのは10とか、確かそんなもんだったよなー」


10年以上、一緒にいたんだな。早いもんだよな。
と、レイはあの頃よりも精悍になった顔であの頃と同じように笑う。

長いようで短い、10年という歳月は少しずつ、しかし確実に二人…レイとカイを取り巻く環境を変えていった。

レイは白虎族の長に。
カイは火渡エンタープライズの社長に。

それは、幼い頃から決まっていた二人にとって当たり前の道だった。


「やっぱり、マオを娶る事になったよ」

「そう、か」

「まあ小さい時から一緒にいるし、マオだったら上手くやっていけるかなって…」

「…ああ」


ぎこちなく笑うレイに目も合わせず、カイは短く答える。
あまり長い言葉を返すと声が震えてしまいそうだった。
そんなカイの様子を知ってか知らずか、レイはそういえば、と続けた。


「ニュース見た。…お前も婚約したんだってな」


おめでとう、と。
その言葉を聞いた瞬間、カイの中で何かが音を出して崩れた気がした。
不毛な恋なのは初めから解っていたことで、それでも共にいる心地よさに気付けば離れたく無いと思っている自分がいた。
確かに幸せだったのに。


「引き際…か」

「え?」

「帰る」


カイ!?と、腕を掴もうとしたレイを振り切って、カイは走り出す。
途中、携帯に何件も着信が入ったが気付かないふりをして、ただひたすらに走った。

どうにか家へ辿り着き、自室のベッドに倒れ込む。と、その時を待っていたかのように再び携帯が震え出した。
カイは一つ、息を吐くと確かめるように通話ボタンを押す。


「……もしもし?」

『…カイ!いきなりどうしたんだよっ』


先程まですぐ近くで聞いていた声なのに、酷く懐かしい気がした。


『具合でも悪いのかって、心配したん、』

「レイ」

『カイ?』


そんな風に思ってしまった自分を嘲笑いながら、カイは再び息を吐き、普段より更に冷たく聞こえるような声色を意識する。


(本来…もっと早くに言うべきだったんだろうな…)

「俺はもう、貴様に逢わない」
『…は…?』

「始めからおかしかったんだ、俺達の関係は。やっとその事に気付いた」

『お前…何、言って』

「俺はもう、貴様の事なんて愛していない。
これで…おしまいだ」

『カイ!?カ…ッ…、』


ぶつり、と。
電源を切られ画面に何も映さない携帯電話は、そのままゴミ箱へと入れられた。


「嘘、だ……。
愛していない、なん…て…」

(でも、こうしなければ…)


きっと自分が離れられなかった。
そしてレイも、マオとの事に罪悪を感じながらずっと自分と一緒にいてくれただろう。
しかしそれはあまりにもマオや最近婚約した彼女、そして何よりレイに申し訳なかった。


「これで…いいんだ」


呟いた言葉と、押し殺した泣き声は闇に溶けていった。


END、

**********
あとがき。
10年後の別れを捏造。
原作では二人共子供がいたので、こんなこともあるんじゃないかな…と。
しかし書いてて凄く悲しい気分になったので、いつかまたこれでもか!てくらい甘々なレイカイも投下しようかと思います(笑

2010/2/5


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