大和:やわらかな殻
「良紀」
譫言のように、良紀、良紀と繰り返す。
呼ばれた名前に振り返ろうとも、腰を一周する腕が片口に埋められた頭が、それを許さない。
「やまと?」
「名前。」
「………たける」
「…ああ。」
犯人はあの大和猛。
アイシールド21だかなんだか知らないけど、この間の大会で負けてしまったらしい。その偽者君とやらに。あ、違った。今はたけるが偽者だった。偽者がホンモノで、ホンモノがニセモノで22?……わけがわからない。
「良紀、…いいにおいがする。」
「うん、柚子湯だったから。」
ちくちくと髪の毛がくすぐったい。好き勝手向いてるやまとの髪からはほんのり土の匂いがした。
「今日は冬至だよ。南瓜も食べたよ。」
「ああ、冬至か。どうりで。」
「たけるも入ってきなよ、柚子湯。」
「ああ。」
たけるが離れたらとりあえず、鞄からお弁当出さなくちゃ。じゃないと明日が大変だ。そしたら数学のプリントやって、……そういや授業変更で漢文が入ってた気がするから予習やっておかないと。えーと、確か前はテントに乗り込むとこまでやったから…だいたい次のページぐらいまでかな。今日は遅くなるかもな。いやだなぁ、眠いのに。
「ねぇ、たける?」
「なんだい?」
「お風呂行かないの?」
「行くよ。けど、もう少し。」
「私、予習やらなきゃ」
「明日…古文だっけ?」
「そう、だから――」
「ごめん。俺も付き合うから。だから、もうちょっとだけ。」
「いいよ、明日も練習あるんでしょ?」
「いや、俺も予習やらなくちゃいけないから」
「……あっそ。」
どうせなら、もう1ページ分余分に進めてしまおうか。
052:やわらかな殻
春は近づき
夏は待ってくれない
―*―*―*―
柚子の香+土の香=採れたて柑橘の香=青春?
ちなみにこの二人の関係って何なんですかね?
考えてないです。
とりあえず、冬至も過ぎました。
一日一日、昼が長くなっていきます\(^∇^)/
'08/12/23
祝日なはずなのに休みの「や」の字もない秋影から、目一杯の感謝を篭めて。
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