大和:夏の気配を知らずに
「ついてこないで」
通常なら険悪な雰囲気を連想させる言葉。だが、それは日常のヒトコマになっていた。
「良紀!」
「だーかーら!馴れ馴れしく近寄ってくれるなっての!あんた自分の人気わかってるの!?ファンクラブまでできかねん勢いなんだよ馬鹿!私をそんなのに巻き込むつもり!?」
「大丈夫さ、良紀。君が心配しているようなことは起こりえない。」
だから名前を呼ぶなって言いたいのがわからないの!?
猛獣よろしく騒ぎ立てる良紀の言葉を綺麗に流して、大和はその手を目前に突き出した。
「ひとつ、彼女達は俺に嫌われるような事はできない。俺に好意を寄せてくれて有り難いばかりだね。
ふたつ、良紀だって男子の間に大層な人気を誇っている。いざというときには盾になるさ。
――そして、みっつめなんだけど、これは君が1番わかってるだろう?」
お得意の爽やかスマイルを保ったままの大和に対し、良紀は眉間のシワをさらに深くした。
「わっけわかんない!ともかく私は平和で平凡な日常を送りたいわけ!それなのにあんたみたいなのに絡まれてたら毎日ごった返しな生活になるに決まってる!そんなの絶対にゴメンだから!」
さっさとどっか行けとばかりに、事の起こりとなっていた弁当箱の青い包みを無理矢理大和に持たせる。そして良紀はその場を後にしようとした、が、さすがは皇帝こと大和猛、案の定易々とその行く手は阻まれ、先程までと何等変化はない。
「悲しいな、良紀はわかってくれていると思っていたのに……」
「あんたが何と言おうと私は絶対にあんたなんかとお弁当は共にしません!」
「そのことじゃない。しかたないなぁ。じゃあ、みっつめ。――それは、誰よりも先に俺が守るから万が一にも良紀に危害が及ぶことはありえないからさ。だから良いじゃないかお弁当くらい。良紀と俺の仲なら別に今更だろ?」
自信に満ちた笑みに何人かの女生徒がノックダウンする音と、信じがたい内容に何人かの男子生徒が涙を流しながら教室を飛び出す音が響く。一方の良紀は、それこそ慣れた様子で動じる気配もなく、抗議の姿勢を強めるばかり。
さらには、「あんた今までの私の話聞いてないでしょ!?学校でそういう事言うなって何度言えばわかるの!?」そうまくし立てて大和を睨んだ時だった。
「だってこの弁当、良紀が作ってくれてるんだろ?」
「……ば、馬鹿なこと言わないでよ!私はただ、おじさんおばさんがうちの母さんに頼んでいったあんたの分のお弁当も、母さんに頼まれて持ってきてやってきてるだけで…!」
「わかるよ。簡単な事さ。良紀の卵焼きは昔から甘い。けれど、おばさんの卵焼きは甘くないからね。俺が甘いほうが好きって知ってるのは、良紀とうちの母さんぐらいなものだから。」
時には、
赤くなった頬が
言葉よりも
全てを雄弁に語ることもある。
057:夏の気配を知らずに
(青い春ばかりを繰り返してる)
(なんで、アメリカ行ってた癖に覚えてんのさあいつは!)
(なんで、俺が良紀を忘れるって言うんだい?)
誰 だ こ い つ \(^∇^)/
上級大尉のときの反省は生かされていませんね!(良い笑顔)
20081217
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