パンドラメインメンバー集合:淡く儚いもの
「「ただいまー」」
全てはこの二人が帰って来たことから始まった。
「げっ……、もしかしてお前ら、そ…の荷物全部…っ……ケーキとか言わない、よな……ッ」
部屋中に漂う甘ったるい香りに、限界まで顔を引き攣らせたレイブン。
「これ以外は。」
「御察しの通りデスよ?」
掲げた箱に酷く歪めた表情を見ていないふりをして通り過ぎてこれから始まるだろうティータイムの為に人数分のカップを取出しに向かった。
「……っ、正気の沙汰じゃねぇ…」
「失礼ですネ、今の発言でキミは世の中のケーキ好きを全て敵に回しちゃいましタよ」
「むしろお前だけ「ブレイクー、適当に食べちゃっていいのーー?」
「あ、フルーツタルトは取っておいてくだサイ」
「えー、どれー?」
「じゃあちょっと待っててくだサい、今行きますカラ」
「ほらギルバート君、キミもデス」と言われて引きずられ浮かんだ不機嫌さもシンプルなダージリンの香りを前に自然と解れて、
「たっだいまー!」
「おかえりー。アリス、オズ」
「この匂いは……!」
「相変わらず良い鼻してるねぇ、アリスは。ケーキあるから手洗っておいで」
「ああ!いくぞ!オズ!」
「うわっアリス!そんなに急がなくても……っ」
「あの二人が来ると選べなくなっちゃうから、今のうちに取っておこうか。…シャロンは何がいい?」
「どれも可愛いらしくて悩みますね…。……では、モンブランをお願いします」
いつものやり取りにクスクスと控えめな声を零していた親友。
この時ばかりはチェインも家も関係ない『私』になれている気がする。
032:淡く儚いもの
このひと時を守るために私は剣を取った。
だから皆で居られる幸せに気付けたんだ。
御題提供:追憶の苑様【切情100題】
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