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シリウス死→ある意味ジョージ落ち:さよなら、また遇う日まで



ご注意ください



*趣味に走ってます。
*完全に趣味に走っていたら、一部事実を忘れて書いていました。
*あえて、訂正はしていません。
*苦手な方は回れ右。
*7巻ネタばれです。
*よろしい方はスクロール↓




*では、どぞ。







レストレンジに……?

……そう。



あの日、仮にも恋人であった彼の訃報に冷淡とも言える反応を私は示した。それが皆には予想外であり、同時に不信感の対象になるのは当たり前だった。私の淡泊な態度が人々の神経を逆なで、反感を買うということがわかっていた。

けれど私は止めなかった。
何も理由も無しにそうしている訳ではなかったからだ。あの時、ちょっとでも気を緩めれば涙が溢れてきた。ちょっとでも余分に口を開けば彼を求める言葉を発していた。それはまさに「独り遺された可哀相な良紀」として周囲が予想していた姿だったと思う。

でも、「可哀相な良紀」は彼といたときの良紀じゃない。彼がそれを望むとは到底考えられなかったのだ。そんな凡庸な良紀であることなんて。


すぐ目の前で巨大な恐怖と長い静寂が終わりを告げた。
一拍置いて上がる歓声が聞こえてくる。カーテンの向こう側、あたしの外側での出来事。

ただ一つのそれが指し示す事実だけが私の中で落ち着いた。反芻を嫌というほど重ねた末の成果だった。


(終わった………?)


歓声の真ん中で揉みくちゃにされる少年。生き残った男の子が少年――いや、青年になるだけの時間を費やしていた。このために犠牲になった命、魂達が沢山あった。



「終わったよ、終わったんだよね……シリウス………」


「ハリーはちゃんと生きてる……、ちゃんと守れたよ…」



青年の名前にシリウスを探すなんて我ながら馬鹿だと思う。
けれど、そうしないという選択肢は最初から存在しなかった。
当然ながらその名は彼がプレゼントした瞬間から、完全にその友人の息子の物になっているのにも関わらず。



念願の勝利を喜び合う友さえ、もういない。



「約束ちゃんと守ったよ、ハリーを生かす…って」

「正直、最後なんて逆に助けられてたけど……」



ずっと先に逝ってしまった彼に話しかける。
後になって思えば、とんでもない自己満足だったと思う。ただ声を発してほしかった。誰でも良いから返事をしてほしかった。
きっと私がいることに気付いてほしかったのだろう。



「でも、これで、私の仕事も全部終わったから……暫く休んだって怒らないでよ…?」


お気に入りのサバイバルナイフを手首に這わせる。ひんやりとした刃が確かに私の命を掴んむ。
冷たいものが手首から指先、二の腕、そして心臓、踵、爪先と走り抜けて行く。
口の中が渇いたのにも関わらず、こめかみを汗が流れるのを感じる。
体からのSOS信号に気付かないふりをしてナイフを握り直して力を込めた。


そう、確かに力を込めた。
ありったけの力で腕を引いたのにも関わらず、苦痛が続かない。
痛みがあったと断言できるのは、刃を突き立てた一点だけだった。
私を休ませてくれるはずのナイフはストッパーが磨耗したために刃がぐるりと回っていた。



……なんで。
なんで忘れてたんだろう。
お気に入りなんかじゃなく、お守りだったのに。
あげく、理由まで忘れるなんて馬鹿にもほどがある。
11歳の誕生日から共にあった杖を使うのも憚られて、これを選んだのもまた安直だった。

このナイフは、シリウスがくれた物だったのを忘れてたなんて。


「シリウス………」

シリウスが私を邪魔した。
シリウスがいた。

途端、体中に血の温もりが戻って力が抜けていく。


「居てくれたの…?ずっと?」

返事は無い。
死人に口無し、当たり前だ。


それでも私の強がりを壊すのには間に合っていた。


「おい、さっき始めたばかりでどうして今こんな有様なんだよ」
「面倒なこと嫌いなんだもん」
「苦労しないで出来ることなんてなにもねーよ。知らないか?若いときの苦労は買ってでもしろっていう日本の諺。」
「馬鹿にしないでよ。私は日本人ですー」
「だから聞いてんだよ」


12番地でのやり取りの中でも事あるごとに繰り返された言葉が蘇る。

いつもこのあと言い争いになって(私がまくし立て、シリウスは余裕そうにニヤついているだけだったが)、いつもリーマスとトンクスに宥められたっけ。



「…リーマス、トンクス、ジェームズ、リリー……、フレッド…ダンブルドア………」

熱くなった目頭に掴まりきれなかった水滴が地面に染み込んで丸い跡を描く。


「こんなとこにいた!俺らの小さなヒーロー、ハリーポッターを一緒に冷やかしに行こうぜ」

声の主はわかっていた。
けれど、返事をするのも首を回して振り返るのもやり方がわからなかった。

返事もなく座り込んだままの私を不思議に思ったのだろう、上から覗き込んできた影が声をあげた。

「良紀!なにやってんだよ!」

先程までナイフを押し付けていたほうの腕をがっしりと握られ、痛みに目を移せば、わずかに血が流れていた。
だらりと下ろした杖腕の傍には、切っ先にのみ血を付けたナイフが転がっている。こんな状況では死喰い人に、なんて言い訳が通用するかどうかは絶望的だった。


「ふざけるな!僕らは生きてる!ヴォルデモートに勝ったんだ!仲間を助け、助けられて生き残ったんだ!!
なのに、良紀はその命を棄てようとした!落としたんじゃない、君は棄てようとしたんだ!フレッドが……、シリウスが助けてくれた命を!!」


「……怖かった」


「怖かったの!皆が逝ったあとに独りで気付いてくれる人は誰ひとりいなくて」

「僕は気付いた!良紀を見つけた!」


丸い跡は重なって、大きな物へと育っていく。

言葉を発しようにも今度は自分の鳴咽に邪魔されるなんて本当についてない。


「……大丈夫。僕は生きてる……。生きて、良紀を独りになんかしない…」





030:さよなら、また遇う日まで




(愛しい鎖と別れを告げた。)








「ハリー!ジニー!」

「良紀!久しぶり、元気だった?」

「うん、お蔭様で」

「あれ?ジョージは?」

「今、コンパートメントにトランク入れるの手伝ってくれてたよ」




お題提供:追憶の苑様【切情100題】









ハイ。完全に趣味丸出しです。
ジョージって結婚してたんだよ、原作では!
気づかないで書いてて、ふと7巻読み返したらけっこんしてたっていう、アレ。

ちなみに、シリウスとは歳の差カップルでした。
クィディッチ関係の後輩だといいな。シリウスが臨時コーチみたいなので顔出してたんだよ、きっと。
多分ジョージとも歳離れてるんだろうなぁ

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あきゅろす。
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