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エル:擦れ違う腕とかち合う視線

無機質な音が充ちる部屋に一つ。小さな異質を見つけた。好奇心から摘み上げてやれば直ぐ、ソレは何物なのかやけにアッサリと知ってしまった。

「良紀、ちょっと良いですか……」

「なに?紅茶なら――」

「違います。良いですから、そこに座ってください。」

ベッドの上に寝そべって彼女が弄っている携帯可能な小型ゲーム機が間抜けな音を発してから、体を起こすまでの動作が酷くゆっくりとして見えた。

「………これ、5ヶ月前のモノですか?」

「うん。まぁ日付見ればわかることでしょ」

「どうして黙っていたんですか?」

「私に関する全てをエルに報告しなきゃいけない義務なんてないでしょ?それに、教えたら入院しろっていうに決まってるしね」

「当たり前ですよ。今すぐ医療機関を手配します」

「いいから、余計なこと、しないで」

感情を見せない彼女は今、何をその澄んだ心に浮かべているのか。
わからない、てんでわかりやしない。
何故生きるのを拒むのか。
人は皆生きるのを望むように出来てるんじゃないのか。
彼女も例外無く、1日でも一秒でも長く生きようとしないのは何故なのか。

「初期の治療で治せます」

「馬鹿言わない。治療法すら見つかってないモノをどうやって治すの」

「対症治療でも可能性はあります」

「私はたかが数ヶ月のために、管だらけでベッドに縛り付けられて大人しくしなきゃいけないなんてナンセンス、堪えらんない」

わからない。
どうして、それが嫌なのか。
生きられるのなら別に良いんじゃないのか。

「Lにはきっとわかんないよ。」

何故。
何故私には理解できないというのか。
そんなこと、今まで一度も無かった。
解らないことなど今まで一つも無かった。

「ど、して……」

「まぁ、エルが気にすることじゃないから」

なんで彼女は笑うんだ。
なんで彼女は笑ってられるんだ。

どうして
どうして
どうして

「そんな迷子みたいな顔しないで。エルが泣きそうになるなんて思ってもみなかったけど、珍しいこともあるんだね。」

泣きそう?
…私が?
ありえない。

第一、"涙"と呼ばれる分泌物なんか出ていないじゃないか。
目が霞みはしているものの、ソレが何らかの関係を持っているとは思えない。

「エルが泣いてくれるなら私も心置きなく逝けるよ」

笑わないで。
物質である以上消えるわけもないのに、そんな風に笑わないで。
いなくなるなんて考えられない――……

わかった。

彼女に生きて欲しかったのは他でもない自分だった。
生きることを望んで欲しかったんだ。

良紀がいなくなるなんて考えたくなかったんだ。
良紀がいなくなるなんて考えられなかったんだ。

「逝かないでください…、生きてください…、此処に居てください……いなくなるなんて言わないでください……」

「エル……?」

「貴女がいないなんて考えられない………っ」

「ごめんね、エル。」

「謝らないでください!」

「ごめん、エル。ごめん。……でも、ちょっと遅かったね。」

「良紀が隠すからです……本当に遅すぎた……」

「…ごめん、ね」






019:擦れ違う腕とかち合う視線






「Lはエルだって事、忘れちゃ駄目だよ」

「……いなくなる人に何も言われたくないです」

「ごめん…」














診断が出て怖かったけどLを邪魔しちゃいけないと思って隠したものの、エルに気付いて助けてほしかったって感じで。
Lに夢中なエルが自分に気付いているのか不安で不安で。けれど全然気付いてもらえなくて、自分なんていてもいなくてもエルにとって同じならせめて、Lの邪魔をしないようにしようっていう深層心理を持ったイメージ。
気付いたらはた迷惑な子になっていた……(´д`)
かってにいじけたみたいな←

伸ばした腕=相手へのSOS信号になっているといいなぁ(´・ω・`)

ってか甘いのか?これ。

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