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銀時:切ないまでに君のこと


「一つ持ってやるからオニーサンに貸しなさい」
「別に大丈夫だよこれぐらい。それに家までもうすぐだしね」

突然かけられた久しぶりの声に驚いて見れば予想通りの人物が隣にいた。

「いーから銀さんに貸しなさいって。久しぶりに会ったんだから話しをするための口実ぐらいくれたっていいだろ?」


「…じゃあよろしく。」


許可を出せば「まってました」とばかりに買い物袋を奪われた。

今は銀時の左手に掴まれて揺れている買い物袋を見て少し羨ましく思ってしまった私はもう末期なんだなぁと心の中でひそかに自嘲する。

「そういえばさぁ、いつこっち来たんだよ」

「んー、先月かな。」


正直、銀時には会いたく無かった。


「じゃあお前仕事とかはどうしてんの?なかなかすぐには見つかんねぇからなぁ」

あまり私を気にかけているような言葉を発してほしくない。

「意外と名が売れてたみたいで一度コタローとの内通容疑で上京と同時に捕まってそのまま就職。笑っちゃうよね、ちょっと前まで敵対してたってのに」



ホント笑える。


「その様子だとあのむさっ苦しいところか……大串君には気をつけとけよ!触れただけでご祝儀貰わなきゃいけなくなるからっ」

近づけば近づくほど遠くかんじるんだよ。

「誰なのさ『大串君』って」


昔から変えられないこの距離なんて、

「あーアレだよアレ。瞳孔開いた多額納税者」


変えられないのならいっそ壊してしまいたい。


「もしかして副長?」


臆病な私に、出来るはずも無いのに。


「それだソレ」


忘れるなんてことも不可能なのに。


「あの人はどこか銀時と似てるよ」

「ちょっ、嫌な冗談はやめろって!銀さんはあんなタラシじゃないからね!!って、アレ大串君じゃね?」

「あ、ホントだ。こっちに来る」

「げぇー俺、あいつ好きじゃないんだけど」
「誰もテメェに好きになってなんか欲しくねぇよ。気持ち悪ィ。
そんなことよりお前いったい今までどこ行ってたんだよ、これから会議あんだろうが」
「すみません、間に合うと思ったんですけど……急いだほういいですよね。」
「ああ。」


問答無用で袋を銀時の手から受け取ると当たり前だけど重さが右手に戻ってきた。

「そういう事だから荷物ありがと、銀時。――じゃあね」



「『じゃあね』じゃなくて『またね』でしょーが」


あえて『またね』を使わなかったのに気付かれてしまったうえ頭に手を乗せられてワシワシと―撫でるとは表現できないような効果音で―撫でられる。


「今はじゃあねでいいんだよ……」




昔から変わらないその動作に泣きたくなったから銀時の手を外して副長の後を追った。






006:切ないまでにきみのこと、





ごめんね、銀時は悪くない。
悪いのは覚悟が出来ない臆病者の私なんだ・・・







お題提供:追憶の苑様【切情100題】





あれ?銀タマ…?

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