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大和:目隠しで彷徨う森

*糖度はいつも以上に0にニアリーイコール


「なんで泣いてるんだい?」

まったくもって間の悪い男、大和猛が現れた。
やつの得意技は人を驚かすことである。私が誰にも会いたくなくて閉じこもっていると、いつも音も無く現れるのだ。
そして今日も例の如くやつは現れた。

それでも私は顔を上げない。いや、上げられない。
それもこれもやつが現れたせいである。やつが来たせいで私は、膝を抱える腕に、顔までも沈めなくてはいけなくなってしまった。私を皮肉って嘲ってるのかと思いたくなるほどノーテンキな青空はもう見えない。血が通っているはずの瞼の裏は、何故か真っ黒だった。

「どうして、君は、泣いてるんだ?」

頼むから放っといて。と、意を決して絞り出した声も、それはできないな、と軽く一蹴される。揚句、そんなに声が震えてるのに放っておけるはずがない、だそうだ。


「そんなの……わかってたら 泣いてなんか、ない」


自分でいうのもおかしな話だけど、一般的視点から見れば私は弱くはない。私に涙を流させるだけの理由なんて極僅かだ。だから原因なんてすぐにわかる……、はずだった。
けれど、家族が死んだわけでも、世界が明日終わるわけでも、愛した恋人が不治の病にかかったわけでもない。そもそも私に恋人なんて、いない。
姿の見えないものと戦う方法なんざ、私は、知らない。


「……わかった。」

一体何が。そう問い質したい気持ちは私の顔を上げさせようとしたし、私もそれに従ってしまった。

目を開け顔を上げたのにも関わらず、例の忌ま忌ましい青色を拝むはずの視界は何故か真っ黒だった。



「………え…?」


戸惑う私の頭の上から、ごめんと失礼を詫びる言葉が落ちてくる。



「やまと……く、ん…?」



「君に泣いてほしくはないけど、君が泣くのを見てホッとしてるんだ。……まったく、どうかしてる。」


君は、自分自身を強く見せるのが、人より上手なだけの女の子だから。
一句一句を搾り出すかのような、何かに堪えるような、口ぶりでそう言った。
私が弱いだなんて本気で思ってるなら、あんたの目は節穴どころかフラフープだと言ってやりたいけど、その辛辣さにそんな言葉は消えていった。


「大和くんも、大して変わらない、じゃん、か」



風の噂程度に聞いたことがある。帝黒のヒーローの一人、大和猛はアメリカに潰されて戻って来た、って都市伝説。

所詮、都市伝説。私も含め、皆がそう思っている話。
人の噂も七十五日なんていうけど、これの場合は二週間すらもたなかった。誰も、大和猛という輝かしい成功者を疑う術を持たないのだ。



「そう、かもしれない」



でも、きっとそれは本当の話。



「俺は、どこか、君に俺自身を重ねているんだと思う。……けど、俺は、泣くわけにはいかない。」



本当は、私なんかよりずっと泣くべき人間なんだと、誰かに頼るべき人間なんだと思う。


「それで、世界…」

「俺は、負けたんじゃない。そもそも戦ってすらなかったんだ。だから、俺は、決着を着けなくちゃいけない」






「俺は、負けるわけにはいかないんだよ、」








089:目隠しで彷徨う森






自らの手で瞳を覆い
自らの声で言い聞かせて
自らの足で私達は進むのだ







‘090524





この二人には恋愛感情とか(少なくとも現時点で女の子のほうには一切)無いんだろうなあ。書きたかったのが書ききれなかったので、いつかリベンジしたい…orz
感情の洪水に飲まれたちょっと斜に構えた女の子と、泣けない大和は今の私には難しかったorz
自己投影して、放っておけない。っって感じができらないというか……、なんというか…………何よりこれは大和じゃねえ!!!←w


BGM:朱いオレンジ

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