グラハム:あなたと鬼ごっこ
「中尉って実は、ものすごく馬鹿でしょ」
「夢見る人間に馬鹿と言うなんて、褒め言葉にしかならないのだよ」
……また始まった。
いつもいつもこう言っては付き纏ってくる。
正直欝陶しい以外のなんでもない。
「そんな露骨に嫌そうな顔をしないでくれないかい?こう見えても私はセンチメンタリストなんだ」
どこが。
どこをどのように見えば"感傷的な人"になんて見えるのか。
「いい加減止めて頂けますか?――仕事の邪魔なんです、正直。」
「いいじゃないか、良紀に会うために私の仕事は早く終わるんだから」
「……帰ってください」
「おや、棚の上にあった熊の置物は片してしまったのかい。残念だな、鮭の躍動感といい、熊と鮭の溢れ出る生命力といい――それなりに気に入っていたのに……」
……全くもって話が通じない。
どういう耳をしているのか逆に聞きたくなりさえしてしまった。
「そんな調子で………部下が泣きますよ…」
呆れと少しの哀れみだけを含んだ息が外へ逃げる。
今思えばこの時、書類への記入を諦め顔を上げてしまったのが間違いだった。
「いや、問題無い。
彼等が私に着いて来てくれる以上私は彼等を信じているし、それが上に立つたる者の義務であり責任だと私は考えているがね」
いつも以上の自信に溢れた表情。
もはや確信と呼んでも良いくらいの信頼関係があるのは簡単に見て取れた。
確固たる意志に絶対なる自信。
これがグラハム=エーカーこの人のカリスマ性の正体であり魅力なのかもしれない――――「良紀からそんなに見つめてくるなんて、ついにその気になってくれたのかい?」
「は?…――!?」
いつの間にか縮められた距離。
あまつさえ、顎に添えられた人差し指と親指によって上を向かされていた。
「み、見つめてなんかいませんっ!」
「いーや、良紀は絶対私に惹かれている。」
「いません!絶対!」
「じゃあ、その早い脈動はどう説明するつもりだい?」
「早くなんかなってませんっ」
「なら、その赤らんだ頬は?」
「自分の頬なんて見えないんで知りません!」
「くくっ……」
「何笑ってるんですか……」
「申し訳ない、何もないんだ。――ただ、良紀が余りに愛しく思えてしまえてしょうがない」
視界が金色で埋まり、キスと呼ぶには大袈裟な、下唇を軽く啄むような動作に私の頭は為す術も無く固まった。
086:あなたと鬼ごっこ
前あげたやつ間違えてたのであげ直し(^ω^;)
すんませんorz
なんか大和って言っても通じるような内容だなぁ。
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