[携帯モード] [URL送信]
手と手を取り合って <053>



目前に並ぶ5〜6人の女の子達。

学校ではリーダー格である子や大人しいとされる子、あとは見たことのない顔も混ざっていた。私の悪評も広まったもんだよなぁと思いながら、背中をつけた(正しくは、つくほどまでに迫られた状態で)壁に寄り掛かりながらガムを膨らます。


「ちょっとあなた聞いてるの!?」

「あーはいはい、聞こえてます聞こえてます。……聴いてはいないですケド。」

「……っあなたって人は…!!」

「べっつにー私があいつとつるまなくなったからってお嬢さん方があいつと付き合えるなんてコトは無いのに、ほーんと元気だねぇ。
せっかく可愛いんだから普通にしてれば彼氏の一人や二人すぐできるって。あ、二人じゃ二股か。なかなかやるねー」

「……っ!!」


怒りで真っ赤にした顔で先頭の彼女は手を振り上げる。掌はしっかり開かれ、入り過ぎた力がそこから腕にかけての小刻みな震えを生じさせている。


「へぇ?殴るんだ?……ふーん。
そうそう、最近勘違いする人が多過ぎて困っちゃうんだけどね、一ついいこと教えてあげる。いや、私にとってはどうでもいいことなんだけどね。」

「なによ!あなた今の状況わかってるの!?」

「今の私の状況?そうだなぁ……、向かって左側から2番目の子が1番可愛いなぁって思ってたけど、それがなにか?」

「ふざけないで!!こっちは真面目に――っ!……なんで、なんであなたみたいな人が佐助君と付き合ってるのよ!」

「そうなの、1番の諸悪の根源はそこなの!私はあいつと付き合ってなんかないんだもの。なのに呼び出しはされるは、姿の見えない女の子たちにまで目の敵にされるし、ほんとやんなっちゃう。私があいつをたぶらかす必要なんかどこにもないもの、――あいつが勝手にくっついて来るだけだし「なんだよそれー。ほら、帰るよ良紀。」

「……あ、佐助…君…。」

「ごめんね?良紀と喋るの大変だったでしょ?喋りたなくせに性格悪いからさ、こいつ。だけど知ってて良紀に構う俺様も俺様だけどさぁー」

「ならほっとけばいいじゃん。」

「やだよ、俺様は好きだもん」

「……"もん"とか気持ち悪い歳だって自覚したほういいよ。」


げえって吐く真似をしていたら人垣の向こうから私の腕を引っ張る力。女の子のものみたいな丸みのある手じゃないから、これは佐助のだ。なんで今日は急いでいるんだろうか?いつもなら事が済むまで呆れたような表情で眺めているだけだったくせに。私としても殴られるのは流石にいい気がしないし、少しは助けろよと思ってみたときもあったけど、別に殴られたことがあるわけでもないから、思い付くままに相手をおちょくってみたりしてたわけだけど。……本当になんなんだ、こいつは理解不能にもほどがある。

怪訝そうな目をしていた私に気付いたのか、「今日はシフォンケーキ焼くつもりだったからさ」と一言つけてさらに強く腕を引いた。
動く意識がないときに腕だけを引かれては、こいつの真の目的は私にアスファルトとキスをさせることじゃないかと疑いたくなるほど私の体が傾くのも仕方の無いことで、案の定私は転びそうになる。
重心が大きく足の外に出て、本格的にまずいと思ったところで何かにぶつかり、その後に足が地面から離れた代わりに佐助の香を鼻に感じた。


「……ちょっと。話まだ終わってなかったんだけど…」

「あ、そっか。んじゃー、そちらのお嬢様がたの話の腰折って悪いんだけどさ、明日まで良紀を貸してもらっていい?」

今更な断りを入れてみるも固まって動きを見せない彼女達に内心同情したのはここだけの話。
わけがわからないだろう。佐助が普段から溺愛していると思われる(少なくとも第三者にはそう見えるらしいことが最近判明した)私が追い詰められているのを助けようともせず、たまに助けに来たかと思えばどーしようもない理由で早く帰りたいからとぬかし、あげくまた明日その話をしてやってくれと言う。その目を止めて欲しい。ネッシーだとかの得体の知れないものを見るような目だよ、そんなこと。私にだってわからないんだ。
けれど、最悪なことに佐助の作るお菓子は美味しいんだ。……あれ、餌付けか?これ





053:手と手を取り合って









御題提供:追憶の苑様【切情100題】


[戦国BASARA:猿飛佐助*被嫌がらせ]






手と手というか手と腕ですね
しかも取り合ってないな、一方的だ





リクして下さったお嬢様、これまでこのサイトに足を運んでくださったあなたに捧げます。






20090315



*←

7/7ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!