傷口に、蓋を <059>(参謀)
「……おはよ…、アヤナミ…」
グシグシと力任せに目を擦っているとバサリと頭に新聞を落とされた。
「赤くなる」
噛み殺せなかった欠伸を逃がしている私を他所に、頬に手を当てられた手に上を向かされた。ワインレッドが視界をいっぱいに埋め尽くしたことで、瞳を覗き込まれている状況を自覚する。その色はやっぱり今日も綺麗だ。
「わかった。やらない。」
「……今日はやけに聞き分けが良いな」
「うーん……、だってさ、充血じゃあアヤナミと同じ色にはなれないじゃん。」
離れていくアヤナミの香にもっと浸っていたくて、喋りながらその腕を掴む。驚いたらしく微かに目を開いたアヤナミは、それでも私の頭を撫でてくれた。頭を撫でる――髪を掻き回すともいう――ときの温いアヤナミの手は酷く心地良いものだと思う。優しい心地よさにだらし無く表情筋が緩む。それを目撃したらしいアヤナミに笑われたことに釈然としないものもあった。けれど、アヤナミが笑っているなら別にどうでも良くなった。
私はアヤナミを悩ませるものがこの世に無ければそれでいいと思う。撫でてくれればもっといい。こうして笑ってくれたなら、世界の全てが無くなってしまったって構いやしない。
「良紀。」
名前を呼んでくれたなら何だって出来るよ。光にだって追い付いて見せるし、空だって塗り潰して見せる。
「お前は、ここにいればいい。」
話しかけてくれたなら何だってしてあげる。全ての災厄を払う盾にだってなってあげるし、全ての障害を切り捨てる剣にだってなってあげる。
「お前は私の背を守れ。」
私の存在の全部はアヤナミのものであるわけで、私にはアヤナミしかないんだよ。
「お前は私の傍にいろ。」
「――当たり前だよ、そんなの」
だからどうか、イラナイなんて言わないで。
059:傷口に、蓋を
これをスキと呼ぶのでしょう?
――ねぇ、ねぇ。
もう独りになりたくないの。
[07-GHOST:アヤナミ参謀長官*甘]
アヤたんで書いているとですね、どうしても連載の主になっちゃうんで……勝手に病んでる雰囲気になります……すみません……。思い入れが強いんですよね……あの子に対して…。一応、私が思い付く限りの糖度にしてみました…が。
実は連載の話の今後の流れに沿ってたりもしてますよ。
リクして下さったお嬢様、これまでこのサイトに足を運んでくださったあなたに捧げます。
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