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開かない扉



「あれに親などいないのだよ」

扉を隔て濁っていた音が、嫌にクリアになって足元にある全てが消えてしまったような気がした。
ずいぶん使い古されてしまった表現だけど、それが1番に当て嵌まっていたように思う。




「あれに親なんている訳ないじゃないか。そんなの生かしておいたって面倒なだけだからね」

楽しくてしかたないとばかりに張り付いた笑みをさらに深くする。マッドサイエンティストなんて呼び名じゃ間に合わないような顔に吐き気がした。

「ああ?事件の彼らかい?邪魔だから利用させてもらったよ」

「酷いなんて失礼な。私達の作品が覚醒する場に立ち会えたんだ、むしろ名誉と誇ってほしいくらいだね」

「ちなみにあれは先の大戦の英雄のDNAを汲んでいてね、……あぁ、そうだ。ちゃんとその前の事情を説明しなく――「良紀ちゃん!?」

ああ、壊さなきゃ
気持ち悪い。嫌だ。気持ち悪い。

こわさなきゃいけない
こわせっていうからそうした
……けど。
ほんとにあれでよかった、のかな


「…っ、あ゛……くッ」

「良紀!……っ考えるな。今だけでいい、思考を捨てろ。私の声だけを聞けばいい。大丈夫だ、私がお前を使ってやる。」

「あ…や……、み…」


昔、外に出たときには何もわからなかったけど今なら解る。
随分良くしてくれたグランパも、あの少年も皆、私のせいで巻き込まれてしまった。
私があの時、「帰りたくない」といわなければ彼らは今日もどこかで人を笑顔にしていた筈だった。
私が負うべき業の一つであるのだ。


「だめ。あいつ、だけは……」


だからあいつだけは、殺さなくちゃいけない。
あいつが生きてる限り私の世界は搾取され続けるのだから、今度こそちゃんと守らなくちゃいけない。


「私がやらなきゃ…っ!」


私の世界を護るのだ。

アヤナミ達は殺させない。




「……っ!離して、」

部下らしき男に庇われるように奥の扉をまさに潜ろうとしているのが視界に入った。
追い掛けたくてもさっきうずくまったときから続くアヤナミの腕による拘束がそれを許さない。

「離してっ」

「……。」

「――離せ!!!!」


あいつはグランパ達を殺したんだ。
許せるわけがないじゃないか。



「離したらお前はあれを殺すだろう」


閉まる扉に焦燥感ばかりがつのる。


「わかってるなら何故!!あいつは!あいつは!私から全てを……!!早く!」

「それはできぬ」

「私なんか死のうが厄介払いが出来たと喜ぶニンゲンしかいない!!だけどグランパは違う!だから私はあいつをここで殺さなきゃいけない!!」

「私はお前を易々と殺させるわけにはいかない。何故お前にはそれが解らぬのだ…っ!」







開かない扉




一向に動きのないアヤナミに阻まれ、結局扉に触れられることはなかった。





≪curtainfall...≫














グランパ→Before‐M参照

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