そうしてあなたを忘れられるのなら <049>
「レギュラスがくれたんだよ」
主がいるときや自分が来れるときは良いが、退屈だろうから、との言葉も添えて。
嬉しそうに笑った後チェス駒を指先で突く。するとそれを嫌がったビショップが盤の隅へと避難した。
「術の開発みたいなのもしたりしてたんだけど、煮詰まっちゃったりとかしたときに使ってたけど……。もしかして他の物持ち込んじゃダメだった……?」
「悪いとは言ってないだろう」
「なんとなく、声が刺だってるからさー、ダメだったのかなと思って」
相変わらず察しが良過ぎる。
開心術師でもないのにどうしたものか。そのくせ、追究することもないのだから咎めることもできない。
「ほら、これあげるからいじけないの」
「……。(私は幼児か!)」
「ほほー、無視か。無視ですね。
じゃあいいよ、レギュラスにあげるから。まだ誰にも見せてない式組んだから見せてあげよーっと」
「式神か?」
「ただの式神じゃあないよ、魔力も織り交ぜてみた改良版…!」
秘密基地を自慢する子供のように掲げた紙には確かにあのわけのわからない形。
「あっちで実験するつもりが出来なかったから、なんと今日が初実験ということで効果は未知数!」
キラキラと光る瞳は子供のまま………忘れてた。良紀はあの頃と変わっていないんだった。
(あまりに分が悪い)
「ため息つくくらい見たくないのかぁ……。じゃ、しょうがない。レギュラスに記念すべき一人目になってもらって来るよ」
「――見ないとは一言も言ってない」
「じゃあちょっとここらへんの物寄せるね、危ないから」
くすりと、確かに私へ向けて笑った良紀に何故か怒りは感じなかった。
049:そうしてあなたを忘れられるのなら
(知らない君ばかりが見えれば、切り捨てることは酷く易しいのに)
(変わってしまった君は何処にも見当たらなくて)
(少しだけあの頃に戻った気になってる)
御題提供:追憶の苑様【切情100題】
―…―…―
たまには長閑な卿をw←
短いです、電光石火。
もう少しコミカルにしたかったけど卿を崩せなかったorz
090321
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