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KAITO:願いごとばかり抱えてた



「マスター起きてください」
「うーん、かぼちゃーまん……」
「マスター!」

体を揺すられた振動で目を開けた。

「……カイト…?」
「ハイ、おれです」

そこには昨日遅くまで調律を続けていたKAITOの姿があって

「今…なんじ?」
「5時29分です」
「まだ早いよー…8時に起こして……」
「はい……ってそうじゃなくてマスター!起きてください!」

私を起こそうと騒ぐKAITOを黙らせるべくその腕を引き込んだ。
布団で窒息させてしまおうなんて我ながら良い考えだ。寝続けられる上に静かになる。大丈夫KAITOはソフトだから布団に埋もれて窒息死なんてシュールな事故は発生しない。

………ん?

「ま、マスター!く、苦し……っ」

あれ?私が掴んだのは?



「カイトそれどうしたの!?」

勢いに任せて布団を跳ね退け、その下からぐったりしたKAITOをやっとのことで発掘した。








「ホンットごめん!」
「いいですよ、別に。気にしてないですから」
「(……嘘だ)」
「別に、こっちが起こそうとしてる意図も全く気にかけず、揚句布団責めにあわせられたなんて思ってないですから」
「ごめんね、カイト。悪気があったわけじゃ……」
「そうですよね。いつもおれが起こさなきゃ学校だって間に合うかどうか怪しいマスターが、あんな起きがけにまともな行動をとれることなんて有り得ませんよね」
「……うっ…」
「さぁ、おれを殺しかけた事でやっと目を覚ましてくれたマスターは次は何をしてくれるんです?」
「……ハーゲンダッツ3個で「6個」
…ハイ」

KAITOの付け入る隙を許さない低音に抗う度胸なんて私にはない。
普段あんなだから余計に怒ると怖いんだ、KAITOは。

軽く3000円の出費は正直痛い。けど私が悪いから仕方ない。
泣く泣く、財布を手に出掛けようとお気に入りのスニーカーに足を入れかけた時だった。

ぐらりと揺れる私のからだ。
後から感じる体温。

「すいません、マスター。おれの我が儘なんて本気にしなくていいんです」
「……へ?」
「……おれ、マスターに1番に…その……、このこと教えたくて……。でもマスター寝たまんまだし…窒息死させられるかと思って…。しかもそのあとも謝るばっかでどうしたのかとかも聞いてこなかったし…」
「カイト……?」
「すいません。」

私を拘束する張本人は、それを最後の一言に黙りこくる。

「ねぇ、カイト。」

返事は、ない。
ったく誰に似てこんな強情になったのか。

「離して、動けないから」

一瞬肩が揺れたのが伝わった後、するすると緩め降ろされた腕。
もっと別な言い方をすればよかった。後悔するには既に遅く、それを諦め新たな目的地へと足を進めた。

戻ってくると壁に背を預け床にへたりこんでいるKAITOの姿に思わず苦笑が零れる。

「カイト」

名を呼べばぴくりと身を揺らし、こちらへと向ける若干の怯えを含んだ碧の瞳。
この愛すべきあほうはきっと良くて“アンインストール”悪くて“棄てられる”なんて馬鹿な考えを浮かべているんだろう。

ホント、これだから“あほう”なんだよ。

「おいで、こっちで椅子に座って話しよう」

やっぱり無言でとぼとぼとキッチンに歩みを進める。
椅子に腰をおろしたのを見届けてから私は一つのものを差し出した。

「はい、これ。カイトの分。」
「………なっ」

驚いてる、驚いてる。
やっぱこうでなきゃ

「KAITO君、人間……人型?まぁどっちでももいいや、おめでとう記念って事で。私のへそくり分けてあげる」

へそくりって言ってもアイスだけど。そう付け足してやれば尚更呆気に取られた様子のKAITOもとい、カイト。

「後で、好きな味買ってあげるから一緒に行こうね」

へらりと笑えばカイトはついに、泣く5秒前みたいな顔にまでなっていた。






050:願いごとばかり抱えてた






「ちょっと泣かないでよカイト!」
「だって、マスターとアイス食べられるなんて…しかも、一緒に買い物……!」
「どうしてかは解らないけど、ちゃんと体温もある“人”にせっかくなったからには楽しませてあげるから」
「マスター、一つだけ頼んでも……?」
「なに?」
「手、触らせてください…」
「な……どうしたの!?」
「だってマスターの体温が感じられるなんて……
おれ、ずっと夢見てたんですよ!」
「い……いいよ…(恥ずかしいこというなよカイトのくせにー!)」




―…―…―…―



やってしまった\(^∇^)/

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