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(銀神)





シャコシャコシャコシャコ


「ゴッホン・・・・・かっ、神楽ちゃん?」


シャコシャコシャコシャコ


「・・・・・神楽ちゃーんってば?おーい無視ですか??」


シャコシャコシャコシャコ


「神楽ちゅあーん?そろそろ銀さん傷ついちゃうなぁー??」


シャコシャコシャコシャコ


「おぃぃぃぃ!!!てめぇ神楽聞こえてんだろ!!シャコシャコシャコシャコうるせぇんだよっさっきっから!!少しは銀さんの話も聞きなさ・・・・。」


銀時が言い終わるや否や右隣に立つ鮮やかなピンクの髪に壮大な寝癖をたたせた小さな少女は朝の作業を止め、海をも想わせる深い青でキッと銀時を睨み上げた。
びくっと年端もいかない隣の少女を見下げて銀時はいけないいけないと、少女の攻撃から視線を洗面台にうつる己の姿に移し苛立ちの言葉を切った。

(ったくなんだってんだよ、銀さん何かしましたか?いや、何もしてないよ?そうだよな新八君?アイツの「かば焼きさん」一枚だけコッソリ食べたのバレたわけじゃあないよな?新一君?あれ?新一郎君だっけ??)

「はぁ・・・。」
昨日からの何度目か解らない小さく重いため息をつくと、銀時を無視してシャコシャコとまた朝の作業を再開する神楽を尻目に、寝癖のようなかわいいものとは言いがたいクリンクリンな銀色の頭をボリボリとかいて昨日の事をもう一度思い返してみる。彼女の様子が明らかにおかしくなったのはたしか昨日の昼あたりからだった。







昨日は、以前から依頼の予約があった簡単な荷物運びの仕事を万事屋3人で難なく済ませ、夕方には家に帰り夕飯(新八の当番)を食べ、新八の帰宅後風呂に入り、いちご牛乳を飲みながら途中からの「劇的ビフォアアフター」を見て(ウチも巧みにお願いしたいものだ。)と、愛犬定春と飼い主神楽のつけたそこかしこにある穴を見ながら思い、その後寝室の布団にて就寝、その日の幕は降りた。


仕事の以来があった事以外はなんてことない普通の中の普通な1日だったはずだ。そんな中神楽の様子がおかしくなったのは、昼すぎごろ。つまり仕事の後、または仕事の最中と思われる。


(仕事・・・・たしか依頼人は未亡人の女将で、倉庫の荷物運びが依頼だったはず・・・・。)


江戸ではかなり有名な旅館の若い美人女将で、女手一つで切り盛りしてきた旅館はそうとは思えないほどに繁盛していたため簡単な仕事とといえど
も報酬はそこそこだった。その報酬のお陰で倒産寸前な万事屋という会社はきょうもなんとかやっていけるというものだ。


今思い返してみても何とも素晴らしい仕事だったじゃないか。依頼人は親切で美人な金持ち女将で(なかなかの良い女だったな。)自分達は簡単な仕事で良い報酬が貰えた。こんな割りの良い仕事になんてそうそう巡り合えない。(万事屋の場合、仕事というもの事態そうそう巡り合えないのだけれども)


アイツは一体全体何が不満だったと言うのか?帰って来てからずっと機嫌が悪かったものの、新八に対する態度と俺に対する態度がえらく違う。(新八にもいつにも増して無愛想だが俺の場合は無視ときたものだ。)という事はやはり俺が原因で、仕事中、または仕事後にアイツに何か言ったかしたのだろう。直接聞けばとも思うが等の神楽は先ほどのように喋りかける事さえも許してくれない。


「はぁ・・・・。」
今だに無表情をきめこみみシャコシャコしている彼女の横で2回目のため息をはく。思い返してはみたものの、やっぱり心当たりはなく、振り出しに戻ってしまう。


(あーもうあれだ、お父さんと洗濯物一緒にしないで〜!とか、お父さん臭い!近寄らないで〜!的なたぐいの反抗期であって自然の成り行きなんだ。銀さんはなーんにも悪くないんだ!・・・・あれ?俺、お父さん?)などと「反抗期」という言葉で片付けようとした矢先、今まで機会のように同じ動きを繰り返していただけの神楽の右手がピタリと止まり、洗面台にペッと口のなかの泡をはき出すと、先ほどのように青が何も言わずに銀時を睨む。


自分を攻めるかのようなくりくりした少女の瞳。これにはかなわない。降参です、とでも言うように銀時は無気力に両手を宙に上げまさに死んだ魚のような目を神楽に向ける。本当に降参だ。


「銀ちゃ・・は、」


神楽は銀時から青を反らし下を向きながらたどたどしく喋り始めた。神楽の突然の音に驚いたが、下を向いて聞き取りずらい小さな声をなんとか聞きとるべく神楽の高さに合わせるためにしゃがみ込んだ。


「銀ちゃんは・・・ワタシ銀ちゃんの子供なんかじゃないネ!!!」


歯ブラシをきつく握りしめたまま神楽の両手の拳にギュッと力が込められてほんのり赤くなる。


「ワタシのパピーはハゲ一人アル!!銀ちゃんはパピーと違うヨ!銀ちゃんは・・・・」


あいた口がふさがらないとは正にこの事なのだろう。まだ怒っている神楽には申し訳のない事だけれど正直、安心感と脱力感でいっぱいだ。神楽の言っている事には確かに身に覚えがあった。やはり俺が思った通り昨日の仕事の時の事だ、きっと依頼人の女将に簡単な自己紹介をした時の事を言っているのだろう。面倒ではあったが女将が興味シンシンとばかりにジロジロと俺達3人を見てくるものだから
「コイツらはー・・・・えーと、あれ俺のガキです。妻とは、あー2年前に離婚して今は男手一つでなんとか養っていってるかんじなんすよ。なっ、チンパチ君?」と面倒ながらも適当に自己を紹介したのだ。後ろでギャンギャン
「ちょっとおおお!!!あんた息子に何とんでもない名前つけてんですかあ!!すくすく育ってほしい気持ちゼロじゃないですか!!」とうるさいチンパンジー君の激しい突っ込みも聞こえないのか、女将は
「まあっ!まあっ!私と同じだわ!私も主人を亡くしてからというもの今日まで一人でなんとかこの旅館を切り盛りしてきたんです。坂田さん、同じ虚遇ゆえお気持ちとっても分かります。色々と大変でしたでしょう?」と俺のデタラメに共感し、さらには感動させてしまったらしい。俺の手を握り尊敬と共感の入り交じった目でみつめてくる。(ありゃりゃ、こりゃ俺に惚れたな。罪な男だよ銀さんは、うん。)などと思ったのもつかの間で、女将は俺の手をパッと放すと
「いけない、いけない!」と慌てた様子で部屋の角の時計をチラリと見てから
「すみません万事屋さん、私これからお役所の大事なお客様を接待しに行かなければならないのでこれで失礼します。報酬の方はお仕事が終わり次第お渡し致しますわ。私はロビーの方にいるのでお荷物の方よろしくお願い致します。」



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あきゅろす。
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