心臓
告白とか、私はしたことなかった。
だから呼び出しかたとか全然わからないし、それに呼び出して告白とかいう古典的なのは避けたかったから。
廊下ですれ違ったときとかに、さらっと言ってしまおうかとか考えて。
ずっとずっと、胸にため込んできた思い。
はっきりいって、彼と...千歳君とすれ違うことなんてめったにない。
千歳君はあまり学校に来ないし、かなりモテたりしてるから彼の周りにはいっつも女の子がいっぱいで近寄ることなんてできないし。
けど、そんな私に今、絶好のチャンス。
*
私は千歳君と同じ、美化委員に所属している。
今日は委員会の日で、集まらなくてはいけなかったのだけど、結局最後まで千歳君は来なかった。
で、委員会の後に各教室の清掃点検というのがあるのだけど。
"あー今日も千歳は休みなんか...清掃点検どないするかなー"
"あーすまんみょうじ、お前二組やったよな"
"はい、そうですけど..."
"せやったら千歳のクラス...一組のとなりやんな"
"はあ"
"悪いけど、一組の分も清掃点検、頼むわ!"
"えぇっ私がですか!?"
"ホンマ悪い!たのむわー!!俺職員会議なんや!!"
と先生が言ったのがきっかけ。
「はあ...」
誰もいない一組の教室を、一人さびしく清掃点検中。
まあ、もう自分のクラスの分は終わってるし、もう一組の分も終わったから帰れる。
「よっし、帰るか!」
そうカバンを持った、その時。
「あっれ、みょうじさんじゃなかとや?」
「え、あ」
私以外誰もいなかった教室に現れた、彼。
愛しい、愛しい私の、大好きな人。
「千歳、くん。」
「なしてみょうじさんが一組にいると?」
私の大好きな笑顔で近寄ってくる彼。
「えと、先生に千歳君がいないから一組の分も清掃点検やってって頼まれたから。」
「そっそりゃほなこつ悪いこつばしたと!!すまんばいみょうじさんっ」
そう言って眉を下げて申し訳なさそうな顔をする千歳君。
「いいよ、別に。帰ってもすることなくてヒマだったし。」
私がそう言うと
「ん、そっか。ありがとな、みょうじさん。」
にこっと笑う千歳くん。
「あ...」
ただそれだけのことなのに、心臓が高鳴って。
抑えきれなくなった思いが。
はじけ散る。
「わたしっ千歳君のことが好きっ!!!」
瞬間、千歳君の瞳がありえないほど大きく見開かれて。
すぐにさっき見た困った顔をして。
「ち、とせく、」
ぽん、と私の頭の上にその大きな手をおいて。
「すまんばい」
そのまま大きな背を向けて。
静かに教室を出て行った。
私は涙を流すこともできなくて。
ただただ、あなたの優しさに。
あなたの手の暖かさに。
この鼓動はあなたのために
(あなたから私へ贈られるその言葉の一つ一つが)(私の心臓をはじけさせる。)(たとえその言葉が)(私にとって、残酷すぎる言葉でも)
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前サイトにて捧げさせていただいたもの。
タイトル変えました。
…悲恋案外好きかもしれん。
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