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その表情に


「ねえ、蔵ノ介」


「んー?」


「いや、んーじゃなくてさ。」


「なんや?なまえ」


「おい、私が言いたいことくらいわかるでしょうが」


「分かれへんねやけどー。」


いや、分かれよ。


「さっきから言ってるじゃん、離れて」


「いやや。」


蔵ノ介は後ろから覆いかぶさるように抱きつき、その綺麗な顔を私の肩に乗せている。


正直言って恥ずかしい。


私と蔵ノ介は付き合い始めてまだ二週間ちょい。


告白は、まさかの蔵ノ介のほうから。


最初はびっくりして声も出なくて、こくこくと頷くことしかできなかった。


そんな私を見て蔵ノ介は、くくっと綺麗に笑った。


その顔に、不覚にもときめいてしまったり。


次の日からは一緒に登下校。お昼も部活のメンバーとじゃなくて、私と一緒に食べてくれたり。


私が転びそうになったところを助けてくれたり。


聞いていたとおり、本当にできすぎているのではないかというほどのパーフェクト男。


優しいし、かっこいいし、頭もいいし。


本当に私なんかが彼女でいいのかと、そう思ってた。


…そう、ほんのさっきまでは。


しかーし、この世の中そんなに甘くはない。


珍しく部活が休みだということで、蔵ノ介が家デートしようと誘ってきた。


私の答えはもちろんOK。だって断る理由なんてないし。


でも私は気付くべきだった。


蔵ノ介がにやりと不敵に笑ったことに。




蔵ノ介の家に着いた私は多少、いやかなりドキドキしながらインターホンを押した。


で、出てきたのは蔵ノ介で。


今日は誰もおらへんねやってニコリとほほ笑んだ蔵ノ介に一瞬背中がヒヤリとした気がしたけど。


まあここまで着たしせっかくだからお邪魔した。


んでもって部屋に案内されて。


それで地べたに座ったら、急に後ろから抱き締められて…


文頭に戻る。





「あーのさあ、離れてくれませんかね蔵ノ介様。」


「んーなまええぇ匂いする…どこのシャンプー使っとるん?」


「だから聞けよ!」


私の言葉を無視して私の髪の毛に顔をすりすりと擦りつける蔵ノ介に突っ込みを入れる。


「めっちゃええ匂い…ん、でも。」


「へ、何」


蔵ノ介は急にふっと顔をあげ私の肩に回していた片手を自分の顎に当てて考えるしぐさをした。


「なまえ、シャンプー変えたやろ。」


「え、なんでわかんの。」


確かに私はシャンプーを変えた。それも昨日。


昨日、ていうかここに来るまで蔵ノ介は私に抱きついてきたりすることはなかった。


というか、させなかったし。



手をつないだりとかも、殆どない。


なのに。


「んー?なまえのことなら何でも分かるで?夕飯は食べへんかったとか、昨日何時に風呂入ったとか」


「いや、それはないと思いますけど。」


ていうか最後のちょっとヤバいでしょ。


てか何で夕飯食べなかったの知ってんだ!


ストーカーか!ストーカーだったりしちゃうのか!付き合ってんのに!


「あ、こらなまえ、今俺んことストーカーとか言うたやろ。」


「なんでわかんだよ!」


まて、こいつは読心術を使えるのか!?


いやいやいや落ちつけ。まて、最初の問題が解決してないぞ。


「離れろってば!」


「せやから、いややって。話するんやから」


「なんでだよ!別にくっつかなくたって話したりできんでしょーが!」


「……」


「あ、あれ、蔵、ノ介?」


急に喋らなくなってしまった蔵ノ介に不安を抱いた。


「お、おーい?」


呼びかけるとさっきより強い力でぎゅうっと抱きしめられて、、、あ、結構痛いぞ。苦しいぞ。


体が動かないから首をめぐらせて顔を覗き込もうとすると。


「んっ!!?」


触れ合った、私と蔵ノ介の唇。


すぐ目の前にある蔵ノ介の目は、『かかったな』とでも言いたげで。


「ん、ふ…っ」


最初は触れるだけだったものも、徐々に深く深くなっていく。


っか、く、苦しっ!!?


蔵ノ介の胸板をたた…けないんだよ!!


だって後ろから抱き締められてんだもん!向き合ってないんだもん!!


それよりなにより首いってええええ!!!!


とか思ってたら、





ふ、




と、名残惜しそうに唇を放してくれた


なんだか悲しげな蔵ノ介の目を見たとたん。


今まで私が何をしていたのかがはっきりとして。


「ななななにすん…!?」


顔が燃えるように熱くなるのを感じて、半分照れ隠しで怒鳴りつけようとしたとたん。


今度は正面から抱き締められて顔を思いっきり胸板に押し付けられて。


「すまん」



「なまえがあんまりにもかわえかったから、我慢できへんようになってん。」




ふわりと笑った彼に




(またもときめいてしまったなんて)(絶対本人には言ってやらないんだから!!)(あーもうアカンわなまえかわいすぎやって!!)


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前サイトにて捧げた物。
白石君はエロスなんだよ、きっと。


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