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俺が恥ずかしい

季節はもうすぐ夏。


今までの過ごしやすさはどこへやら、だんだんと日差しが強なってくる、5月。


「っはあ、はあ、は...」


明日は、運動会。


「はぁ、は...速なったやん、なまえ...っ」



「っは...はあ、け、謙也にはかなわなへんけどなっ」



俺、忍足謙也と俺の彼女、なまえは目前に迫っとる運動会に向けて走り込み中。



俺はクラス全員リレーのアンカーやねん。



で、なまえはその俺にバトンを渡す役目。



せやから二人で最終確認っちゅうか...まあそんなんやっとんねん。



「っにしても、今日はあっついなぁ...」



「せ、やな...これでも夕方かっちゅーほど日差しが照りつけとるでっ...」



俺等はそろってじわっと湧いて出る汗をぬぐう。



「まったく、嫌になってまうわな〜。明日はここまで暑ないとええんやけど...」



「えーやん暑くても!俺はそのほうが燃えるで!!燃焼や燃焼!」




「うちは結構ですー」



言ってから二人で笑いあう。



こんな時間が大好きやった。



俺等はこんなんでももう受験生。



運動会が終わって、修学旅行が終わって、テニスん大会が終わってしもたら...



「(俺的には、絶望的やねん、)」



なまえは俺らテニス部のマネージャーや。



せやから、朝練んときも部活中も下校も、ずっと一緒やった。



せやけど、テニスん大会が終わってしもたら俺らも引退。



一応、なまえの彼氏やから、一緒に勉強しようとか、色々計画は立てとる。



でも、どうやったってなまえとおれる時間は減ってまうのは確かや。




せやから、なまえとおれる時間を、ほんの一分一秒でも大切にしたいと思っとんねん俺は。




「?謙也どないしたん、なんか考え込むよーな顔して。」



ずっと黙っとった俺をなまえが不思議そうな顔して覗きこんでくる。



「ん、いや、何でもあらへんで。」



それだけ言って、すっと立ち上がる。




「さーって、今日はそろそろ帰るか!日も暮れて来よったしな!」



「、そやね!」



なまえは一瞬何か言いたげな顔しとったけど、すぐにいつもの笑顔に戻って立ち上がった。




んで、帰り道。



「んー...」



「どないしたん、なまえ。」



今度は俺やなくてなまえが何やら考えこんどったからちっと顔のぞきこんで聞いてみる。



「いやな、謙也にはキャッチフレーズがあるやろ?」




「ん?ああ、"浪速のスピードスター"んことか?」




「せや」



こくんと頷いたなまえはどっかのボレーヤーみたいに風船ガムをでっかくふくらました。




「あんな、クラス全員リレーん時にな、謙也にバトン渡す時にでもな、それ言うてみたいねん。」




「あ?」





「かっこええやん?謙也みたいで」




にっこりと笑ったなまえに目が合わせられんくなって、つい視線を斜め上に飛ばしてまう。



っちゅーか、なんやねん"謙也みたいで"って!



めっちゃハズイやん!照れるわアホ!




「っふふ、ほな今日の夜にでも考えとくわ!謙也も考えといてな?ほな、また明日!お互いがんばろーな!」



は、と気付くともうなまえん家の前で、なまえはすでに扉の向こう側。



"ただいまー!"っちゅうでっかい声が聞こえて、"おかえり!ってうわ!あんた汗まみれやんけ!はよお風呂入ってきぃ!""はーい"



そんなやり取りが聞こえてきて。



自分でもわからんうちに口元がゆるんどったっちゅーわけやな。








「ほな、只今より平成××年度、四天宝寺中学校の運動会をはじめますー!」



「「おぉー!」」




いよいよ運動会本番。



流石大阪っちゅー話やな。盛り上がり方がありえへん。



「うぅ〜...暑っいわー謙也ぁ...」



「昨日程でもないやろ!まあでも、こんくらいあれば燃えるわ!」



「謙也が燃焼してるせいでもっと暑なるっちゅーねん...」




今にも溶けだしてしまいそうななまえ。



そんななまえの体操着からでた肌は白く、艶めかしく、透き通っとって、触れたら壊れてまいそうな...ってえ!



何考えとんねん俺は最悪やなんやねん!!!




訳分からんことを考え出した脳を覚ますべく、ふと思い出したことをなまえに聞いてみる。




「せやなまえ、昨日のアレ、どないした?」



「うー?あれってなんやー...」



「どんだけ元気ないねん...アレやアレ、キャッチフレーズ。」



「っキャッチフレーズな!めっちゃええの思いついたで!!」



とたんに輝き出したなまえを"おーさよかさよか"と撫でると"子供扱いすんなや!"と言われた。




「で、どないなんになったん、なまえんキャッチフレーズは。」




「っふふー、それはなー、ひ・み・つや!」




いたずらっぽくしししーと笑うなまえからやっぱし目をそらしてまう俺。



...情けないな。




「なんでやねん、教えてくれたってえやろ?」



「ダーメ♪さ、そろそろ全員リレー始まるで!」



なんやようわからへんけどはぐらかされてしもたか。



まあ後で聞けばええかととりあえずなまえん後ろに並ぶ。




『ほな次は三年生全員によるクラス対抗全員リレーやでぇ!!ルールは難しいことなし、単に全員でバトンつないで早いクラスの勝ちや!ほな行くでー!!いちについて!よーい...スタートォ!!』



パンって銃声が聞こえたと思うたら皆もう走り出しとった。



俺ら二組は...今んところは...6位か...微妙やな...



「謙也〜♪」



「...なんや、白石。」



ふと横から声がしたと思たら、すぐ横に、本当はもっと前におるはずの白石がにやにやした顔でおった。



「なまえちゃんのキャッチフレーズ、聞いたか?」



「あ?聞いてへん...っちゅーか教えてくれへんっちゅー話や...」



「ほー...まあ、しゃあないわな(笑)」



「、何でわらっとんねんお前!」



くくっと笑った白石に腹立ってきっとにらむと、"あー怖いなあ謙也はーまあ、俺に任しとき..."とだけ言うて自分の場所に帰って行きよった。



っつか、なんで白石がキャッチフレーズんこと知っとんねん...



なまえに聞こうかと思うたけど、真剣な顔つきでレースを眺めとるなまえには声かけられんくて、俺も一緒にレースに見いっとった。







そしていよいよ次はなまえの番。



俺ら二組は白石が四・五組を抜かして三番。



「、ほな行ってくるで、謙也♪」



「おう、頑張ってきぃ」



「いえっさー!」



にっこりと笑ったその瞬間、なまえは走りだして。



俺はスタートラインに立った。



「(やっぱしなまえは速いな...)」



あっという間に七組を抜かして二位に上り詰める。




せやけど、あとちょっとっちゅーところで一組だけは抜かせへん。




んで、抜かせへんまま、バトンは俺の方に回ってくる。



なまえは、俺にバトンを渡すべくおもっきし走ってくる。



んで、叫びよった。



「浪速のスピードスターの彼女がおるっちゅう話やでー!!」



「んなー!!!」




俺が(きっと)真っ赤になった瞬間、バトンは俺の手に渡りなまえはくすっと笑った。




「っあぁああああ!!!くっそ!浪速のスピードスターの彼女の彼氏が浪速のスピードスターっちゅう話やああ!!」




もう恥も忘れて自分でも何言っとるか分かれへんけど叫びながら全速力で走る。



一組のそいつを抜かした瞬間、"うおっ謙也速か!!"っちゅう声が聞こえた気がすっけど無視や無視!!



そんまま走りきってゴールテープを一番に切る。



んでも走り続けて、まっ先になまえんところに行った。



「謙、うわっ!!?」



「ううぉお!!?」



...別にこうするつもりはなかってん。



抱きつくつもりなんてな!!



なまえは驚いとったけど、すぐにふふっと笑って。



「ええキャッチフレーズやったやろ?」



といたずらっぽく笑った。




やめろや俺が恥ずかしい

(...なんやねんこいつら)(謙也ほなこつはやかー!ばってん、次は勝っちゃるばい!)(千歳も燃え上がんなやー)


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これも前サイトより。
ちょっとお気に入りだったので引っ張ってきた。
チョイ役で出した千歳がお気に入りです←


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あきゅろす。
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